公認会計士の海外展開講座 その5 【2013/14年度香港政府予算案】
日本では、2015年からの相続税の引き上げ、2014年からの消費税の引き上げ、厚生年金基金の解散など、お金の暗い話ばかり議論されていますが、香港では様相が全く異なります。
香港も盛れなく、高齢化、歳入の減少が叫ばれていますが、なんといっても特筆すべきは、税金の還付です。ここ2年間、納税者にして、一律HKD6,000が還付されるという大胆な施策が実施されています。
消費税や相続税もなく、キャピタルゲイン課税もなく、低所得税、低法人税でも、このような施策を実現できるということが、我が日本人にとっては、とても耳が痛い所です。
2013/14年度香港政府予算案が発表され、歳出予算の総額は前年比15.6%増の4,400億香港ドル(約5兆2,140億円)で、予算の配分先はこれまで通り、教育、社会福祉、医療が中心であり、これら3分野で経常支出の6割を占めています。
一方、歳入予算の総額は4,351億香港ドル(約5兆1,559億円)にとどまり、来年度は現時点で約49億香港ドル(約581億円)の歳入不足が見込まれることになります。
注目される財政上の支援策は下記の通りとなっています。
■ 事業所得税・給与所得税および個人総合課税の75%減免(上限10,000香港ドル)
■ レーツの免除(1物件あたり上限1,500香港ドル)
■ 住宅用電気料金の補助(1,800香港ドル)
■ 公営住宅賃料の2ヶ月分免除
■ 総合社会保障支援制度による給付金の1ヶ月分増額
■ 社会保障給付金制度における高齢者手当、高齢者生活手当、障害者手当の1ヶ月分増額
また、演説の終盤近くの「Embracing the Challenges Ahead」という箇所では、そこに題された通り、香港の前途に横たわる高齢化問題から目を背けるのではなく、それをembrace(受容)した上で、将来予想しうる財政上の困難に備える必要があることを述べています。
また、この問題を長期的視点に立って研究するためのワーキンググループを設置することも明らかにしています。
香港では現在、現役世代5.3人で1人の高齢者を支えている形ですが、これが30年後には現役世代1.8人で1人の高齢者を支えるようになります。
今回の予算演説には、人口構成の高齢化に伴って将来予想される歳入不足に対し、例えば、これまでのような公有地の売却やFundの剰余金による穴埋めというような、その場しのぎの対応にはもはや限界があり、何らかの抜本的な対応が必要だという思いが見て取れます。
財政長官の脳裏には、例えば近い将来の消費税の導入なども描かれているのでしょうか。
なお、財政長官は予算案の発表に先立ち、前年の香港のGDP成長率が+1.4%にとどまったことを明らかにした上で、2013年のGDP成長率も+1.5~3.5%の比較的低い数値にとどまるとの見通しを示しています
2012 © 佐久間 将司@EMZ株式会社