トルコは実は食料自給率100%を超える農業大国。
夏休みになると実家がある田舎に帰って、旬のものを加工して保存食を作るという人たちもいます。子供たちは田舎でのびのびと遊べて、親に孫たちを会わせることもでき、大変な農作業を手伝うこともできて、作った保存食を持って帰って冬場に食べられるという「一石四鳥」なのです。
田舎に住んでいる親や親せきが、都会に住む人たちの分も作って送ってくれるということもあるようです。最近トルコでも食の安全を気にする人たちが増えています。誰が作ったか、どのように作ったかがはっきりわかる自家製のモノを売っている市場や専門店も増えてきています。
保存食を作る方法は、大雑把に3つ。
1. 干す:果物やナッツ、野菜など。
2. 漬け込む:野菜やオリーブの塩漬けやオイル漬け、酢漬けなど
3. 煮込んで瓶詰:果物のジャム類やサルチャ
1. 乾燥食品
果物やナッツを乾燥させたものは、街中のお店や市場でも山盛り状態で売られています。1キロいくらで売られていて、凝縮した旨味があって、お土産にしても喜ばれます。
村に行くと、杏やイチジク、スモモやリンゴなどの木が自宅にあることも多く、シーズンになるとあちらこちらの庭や屋根の上に干されています。カッパドキアなどがあるトルコ中央部は高原地帯のため、夏場はほとんど雨も降らず乾燥しているので、アンズやトマトなどもしっかり乾物になります。クルミやアーモンド、ピスタチオなどは外側の果実の部分を剥ぎ、中の種の部分を干します。
トルコでは豆料理もよく食べられています。ひよこ豆やインゲン豆、そら豆やうずら豆、レンズ豆など、豆類も乾燥されたものが年中出回っています。最近、日本で売られているヘーゼルナッツや干しイチジクの原産地を見るとトルコ産となっているものが見られるようになりました。
ヘーゼルナッツの生産量でトルコは世界一を誇ります。ピスタチオ、クルミ、アーモンド、ヒマワリの種といった種実類の2019年の輸出量は60万トン、27億5千万ドルを超える額で、重要な輸出産物となっています。
2. 漬物
キャベツやキュウリを塩漬けにした漬物もポピュラーですが、トルコ人にとってとても重要なのがオリーブです。特に朝ごはんにはオリーブが欠かせません。オリーブは、熟れ始めは緑色をしていますが、完熟すると黒くなります。緑色のオリーブの方があくが強く、一つ一つ切れ目を入れてから、何度か水を変えながらつけ置く作業をする必要があります。その後、塩漬けにします。
黒いオリーブは、塩漬けにするだけで大丈夫です。特に輸出されているものは、傷まないようしっかり塩漬けになっていてしょっぱすぎることがありますが、その場合は一晩真水につけておくと塩気が抜けておいしく食べられます。
3.煮込んで
イチゴや杏、バラやイチジクのジャム、オレンジやベルガモットのマーマレードなど、旬の果物を砂糖で煮込んで瓶詰にしたジャムは、作り方が割と簡単なこともあり、家庭でもよく作られています。お母さんの作ったジャムというのをお裾分けでいただくこともあります。
煮込み系の保存食で最もポピュラーなのがサルチャです。サルチャはトマトやパプリカを煮込んだペーストです。トルコの南東部では辛いパプリカのサルチャ、中央部ではしっかり煮込んだサルチャ、エーゲ海地方では天日で干しながら作るサルチャ、と地域色があるのも面白いです。
自家製のサルチャは、塩の量が違ったりニンニクなどの香辛料が入っていたりとその家の味わいがあります。旬のトマトを薪でじっくり煮込んで作ったサルチャは、トマトの旨味が凝縮されていてそれだけでも美味です。煮込み系のトルコ料理のほとんどはサルチャを味付けに使っているので、日本のお醤油かお味噌のような使い方のように思えます。
2時間ほど煮込むと水分が出てくるので、一度火からおろして挽いて皮などを取り除きます。さらに2時間近くペースト状になるまで煮込み、塩などで味付けして出来上がり。熱いうちに瓶詰にすると真空にできるので保存がききます。
サルチャのメインはトマトを原料としたもので、2018年には103か国に輸出されています。日本にはトマトピューレやダイストマトの缶詰などが1980年代から輸出されてきました。
2020/07/08
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住