2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻がはじまりました。ロシアの矛先はウクライナですが、国境を接し陸続きの隣国フィンランドの状況、国民の心情はどうでしょうか。今回は、世界が混沌としている中のフィンランドの今をお伝えします。
フィンランドは1917年にロシアから独立して今年で105年になります。その間冷戦やフィンランドのEU加盟などの際には、常にロシアに対してしたたかな姿勢で外交政策を取ってきました。
第二次世界大戦後に設立されたNATO軍事同盟には、反対側の隣国スウェーデンと共に非加盟国として存在していました。
しかし今回のウクライナ侵攻で、フィンランド国民へ世論調査を実施したところ、5割がNATO加盟に賛成していました。
実はこの侵攻以前からNATO加盟への気運は高まっていて、加盟申請に対する国民投票を求める署名運動が展開されていました。その結果、国会審議で必要な5万票を集め、国会へ申請することになりました。
こうしたウクライナ侵攻をきっかけに国民の心情の変化は、さまざまな形で顕著になってきました。
一つは、侵攻への抗議デモが毎週末フィンランド各地で行われています。
他にはウクライナの原発発電所区域が爆撃された翌日からは、フィンランド国内における放射線量の測定や、甲状腺保護のためにヨウ素剤の服用への懸念などが高まってきました。今のところこのような必要は全くありませんが、日本人が災害に備えるのと同じように、ここフィンランドでも有事における備えの一つとして象徴されています。
また以前このコラムでも紹介した核シェルターの利用も懸念されています。もちろんこちらも今のところ利用の懸念は一切ありませんが、一般市民としてはどこにあるのか、もし何かあった際には本当に利用できるのか、といった「備えあれば憂いなし」の雰囲気が広がっています。
「Terve! フィンランドの核シェルター人口の7割をカバー」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2017-06-02
こうした国民の懸念を知ってか、フィンランド大統領は「国際社会が変化の真っ只中にいるとき、私たちは冷静さを保たなければならない」と話しています。
大統領にとっても、この10年間でロシアと幾度も話し合いを重ねてきましたが、やはり他国のあり方、そしてそれを統治する人間の心を理解するのは非常に難しいと述べています。
歴史的に支配されていたフィンランドは独立し、今までうまく外交政策を取ってきた背景から、フィンランドはロシアについてより理解がある国、と思われてきた部分があるのかもしれませんが、大統領のこの発言によれば、それは誤解であることがわかります。
フィンランドとロシアの関係は大きく揺らぎ、今までのような関係に戻るには、ロシアが大変革しなければならないという報道もあります。
ウクライナ侵攻から2週間が過ぎましたが、事態は悪化するばかりで、フィンランドの立場や役割も今までと大きく変わりつつあります。
次のコラムを執筆する時には、事態が落ち着いていることを切に願うばかりです。
参考記事:
署名活動について
https://yle.fi/news/3-12335563
国民世論調査について
https://yle.fi/news/3-12337202
ヨウ素剤について
https://yle.fi/news/3-12339880
ロシアとフィンランドの関係変化について
https://yle.fi/news/3-12336199
2022/3/11