6月から長い2ヶ月の夏休みに入ったフィンランドの学生たち。この期間に高校生以上を中心にKesätyö(ケサ・トゥオ)という日本でいう夏休みのアルバイトを体験することが、将来の就職や自身のキャリアアップにつながると言われています。今回は、フィンランドの若者たちに人気の職業を紹介します。
フィンランドには、すべての若者が働くことに興味を持ち、自分でお金の管理や社会の一員として社会に関わることを支援する「TAT」という団体があります。このTATが今春、中学・高校・応用大学の学生約15,000人を対象に、将来の職業についての見解を調査しました。
その結果、男女ともに関心の高い職業分野は、
1位「ヘルスケア」
2位「メディア・コミュニケーション」
3位「文化・エンターテイメント」
4位「観光・飲食」
5位「小売業などの商業系」となりました。
男女別にみてみると、女子は
1位「ヘルスケア」
2位「サービス業」
3位「旅行・飲食」
男子は
1位「テクノロジー分野」
2位「建築・建設」
3位「国防・防衛」*
となりました。
*フィンランドは、主に男子18歳を対象に兵役制度があります。この制度を経験した後、国防・防衛関連の仕事に就くことを希望しているようです。
このようにヘルスケア関連の職業に男女ともに人気があるのは、フィンランドはEU加盟国の中で高齢化社会となるのが一番速いと言われている背景があり、このヘルスケア分野の職種の一つである保育士と介護士の2つの資格を持った「Lahihoitaja(ラヒ・ホイタヤ)」の需要が年々高まっていると言われています。
男女平等のイメージが強いフィンランドですが、今回の調査結果からは、依然として非常にジェンダー的(性別に偏った)であることがわかりました。女子は、サービス業を中心とした仕事ですし、男子は、テクノロジーや建設、物流・貨物輸送などの分野に人気がありました。
また普段の生活において情報やスキルを得る方法として、学校教育が最も一般的であることもわかりました。このほかに親や友人たちとの会話、読書や趣味を通じてとありますが、男子は、YouTubeやゲームから情報やスキルを得ているという回答があり、ジェンダー的かつ世代間の違いも現れていました。
さらには両親の教育的背景や雇用形態が、職業の選択や将来を考える上で強く影響することもわかりました。今回の調査では、大卒の親を持つ若者の81%が小学校卒業後に高等学校への進学を予定しているのに対し、職業資格(中卒・高卒・職業学校卒)を持つ子どもでは36%にとどまっています。また両親ともに働いていない若者の14%が、将来仕事を見つけられないと考えています。
現在フィンランドの失業率は7.6%で、昨年のコロナ禍よりは回復しましたが、人口550万人中でこの割合は依然として高い数値であります。そうした労働市場の背景も重なり、若者の職業選択は、昔に比べると早期から、そして親や友人からの影響も強くなっていると言われています。
コロナでヘルスケア分野の職業の需要も増えて、ますますこの分野の人気が高まることも示唆されていました。今夏は、コロナの変種株がヨーロッパ諸国を感染している影響で、まだまだ経済回復も鈍く全体的に停滞中です。
こうした社会背景の中、若者が将来に対して自分の能力に自信を失ってしまわないように、親や友人たちとワーキングライフについて語り、人生の幸福のためにその重要性を強調することが重要であると、TAT団体のディレクターは話していました。
参考記事:
TAT団体および職業調査レポート
https://www.tat.fi/tyttojen-kiinnostus-johtajuuteen-nousussa-perinteinen-sukupuolijakauma-patee-edelleen-tulevaa-alaa-valitessa/
フィンランドの失業率
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/05/tyti_2021_05_2021-06-22_tie_001_en.html
2021/07/2