2020年も残すところあとわずか。今年はこんな年になると誰が予測したでしょうか?
新型コロナウィルスの感染状況は、夏から秋にかけては一旦収束していましたが、やはり11月に入ってから世界中で再び感染拡大が報道されています。
フィンランドにおいては国全体の感染拡大のスピードは相対的に遅かったのですが、11月からヘルシンキ市を中心とした首都圏内での感染者が増え始め、11月末から12月中旬ごろまでリモートワークや遠隔授業がほぼ要請されはじめ、イベントや会議も屋内外ともに10人未満という制限が発表されました。
来年も引き続きこのような状況が続くと見られますが、今回フィンランドは他のヨーロッパ諸国と比べてウィルス拡大の抑制がうまくいっているという見方があります。専門家の間で推測する範囲では7つの要因があるのではないかと話しています。そこで今回はその考えられる要因について紹介したいと思います。
フィンランドは人口10万人あたり342件の感染数が診断され、これはヨーロッパで最も少ない件数と言われています。そのため各国およびフィンランド国内の専門家がその要因を調査しました。その結果、フィンランドの国民性や社会システム、地理的な要因が浮かび上がりました。それでは簡単に見ていきましょう。
1. 国民の海外への渡航自粛
6~8月はフィンランドの夏休み。普段なら南欧やアジアなどへ旅行へ行く人が多いですが、さすがに今年は自粛し国内旅行へ切り替えた人たちが多かったとみられます。
2. 生活および経済圏がほぼ国内限定
1と関連する要因として、基本的には日本と同じようにフィンランドは、普段の生活および経済が国内で成り立つ社会です。ということは陸続きであるヨーロッパ大陸のように近隣諸国の国境を超えて日々仕事や買い物へ行くことはほぼなく、感染抑制につながっているということが考えられます。
3. 政府をはじめ医療機関への信頼
1の要因の根底には、政府や国立感染研究所が発表する日々の報道に対して、国民が信頼を寄せていたと考えられています。パンデミックの最中ではこうした専門機関が的確な情報を伝え、国民がその指示に従うことが最も重要なことと話しています。またメディアの伝え方も、例えば恐怖心を煽るような表現よりは、前向きに対処するような伝え方の方が国民は信頼を寄せ行動に移すと話しています。
4. 人口密度の低さ
フィンランドでは1平方kmあたり約18人が住んでいるのに対し、例えばベルギーでは約400人も住んでいます。すると必然的に個人的な空間や他人との距離感が保たれます。また家族(世帯)の規模や暮らし方も南欧などとは異なる現状から、感染率の低さにつながったのではないかとみています。
5. 欠勤日の補填制度
フィンランド社会保険庁は、ウィルス感染または蔓延を防ぐために欠勤を余儀なくされた従業員に対して、感染症による日当を支給しています。16歳未満の子どもが自宅待機などの状況で働くことができない場合も、この日当制度を受けることができます。こうした制度は他の国ではあまりみられず、収入のために働き続けるという悪循環に陥っていると話しています。
6. 追跡アプリの浸透(写真参照)
8月末に追跡アプリが導入され、導入初日には人口550万人中、100万人がダウンロードしたという発表がありました。クラスターを発見し、そこに居合わせた人々へ通知し検査へ行くような仕組みであるため、即座に蔓延を防いでおり、検査と追跡が成功要因の一つだと国立感染研究所の専門家は話しています。
7. 国民性によるリモートワーク・授業の定着化
最後はご存知の通りフィンランドのリモート社会が成功要因の一つだとも言われています。しかしフィンランドもすべての労働者がリモートワークが可能な状況ではありません。ただ社会学者などによると、フィンランドの国民性として自宅で仕事をすることは苦痛ではない、むしろ大歓迎という特徴があると指摘しています。
以上7つの要因が推測されていますが、果たして来年以降、これらの要因が引き続き功を奏するか見守る必要があります。
今年は異例な年となりましたが、皆さまにおいてはいかがでしたでしょうか?
来年もどうぞウィルス感染に注意してお過ごしください。
Onnellista Uutta Vuotta 2021!
記事参照元:
https://yle.fi/uutiset/3-11643963
2020/12/15