今回は季節行事とともに、フィンランドの夏休みについてご紹介します。今年も半分が過ぎたところで、夏休みが始まりました。毎年どんな休みにしようかとあれこれ考えますが、フィンランドの夏休みは「何もしない」ことが一般的です。ビジネスマンたちは、普段の忙しさからこの時期ばかりはゆっくりとコテージで過ごすため、仕事は一切しません。|何もしないフィンランドの夏休み

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2018.07.27  / 最終更新日:2022.10.20

Terve! 何もしないで充電するフィンランドの夏休み

pic_finland20180727

今年も半分が過ぎたところで、夏休みが始まりました。

毎年どんな休みにしようかとあれこれ考えますが、フィンランドの夏休みは「何もしない」ことが一般的です。

今回は季節行事とともに、フィンランドの夏休みについてご紹介します。

◆一日でも長く太陽の光を

毎年、夏至の直後の週末は、Juhannus(ユハンヌス)といって、北欧諸国に昔から伝わる夏至祭が開かれます。これは、キリスト教の洗礼者ヨハネの誕生日とされる6月24日が祝日となり、ちょうどイエス・キリストが生まれたクリスマスの半年前の誕生日であるため、夏のクリスマスとも言われます。近年は、6月20日〜26日の間の土曜日を祝日とする移動祝祭日として、その前日はユハンヌス・イブになり、この日から祝日モードになります。

夏至は太陽が頂点に達し、それ以降、冬至に向かって徐々に日が短くなるため、北欧諸国では、一日でも長く太陽の光が地上に届くようにと、太陽に力を与えるといわれるKokko(コッコ)と呼ばれる焚き火を湖畔近くで燃やします。
ユハンヌス・イブにこの焚き火を燃やし、天気が良ければ外でBBQをしたり、サウナに入ったりして夏至祭を祝います。

昔から夏至の夜は、神秘的で超自然的なものと結びついていると言われています。薬草を朝露が下りる前に摘んで枕の下にしいて寝ると、ご加護や未婚の女性であれば未来の夫が夢に出てくるなどと言われたり、またこの時期に咲く草花などで冠を作って1年間の健康を祈り、夏至祭のあとにこの冠を川に流して将来を占うなどとも言われています。

◆パスワードを忘れるほど遊べ

さてこのユハンヌスを境に、夏休みに入る人が多くなります。その夏休みは、だいたい3~4週間。学生は6月から夏休みが始まっていて、親御さんたちはそれに合わせて1ヶ月近くの休暇に入ります。国外に旅行する人もいれば、Kesämökki(ケサモッキ)と呼ばれるサマーコテージに滞在する人もいます。後者が典型的なフィンランドの夏休みの過ごし方。ユハンヌス直前は、荷物をどっさり詰めた車が高速道路を走り抜けていく姿が見受けられます。

するとビジネスマンたちは、普段の忙しさからこの時期ばかりはゆっくりとコテージで過ごすため、仕事は一切しません。1ヶ月近く休暇を取ると、職場はどうなるかというと、もちろん代わりの人がバックアップします。それでも何人もの人が一度に休んでしまうと手が足りなくなるところもあります。

そのような職業や業種については、学生たちのサマージョブ(夏休みのアルバイト)のボジションが与えられます。これですべて賄いきれるわけではないので、この時期はフィンランド全国どこでも夏休みモードと割り切り、窓口や接客対応は通常よりも遅くなる、という認識が浸透しています。特に6月から8月にかけては、業務がほぼストップすることを前提に、それ以前に仕事を終わらせるなどの工夫が必要です。

それほど夏休みを取るということは、フィンランド人にとって大切なもの。この夏休みにゆっくり休み、仕事や勉強をなど何もしないことが重要です。何もせずに、ひたすら遊び家族や友人と過ごすことが、休み明けの仕事への活力となると言われています。休暇に入るときに、上司や同僚から「PCのパスワードを忘れるほど休みなさい」と半分冗談で言われるようです。

◆夏は家族行事が目白押し

そんなわけでゆっくり休み何もしない夏休みですが、この時期に引越しや結婚式など人生におけるちょっとした行事を行う家庭が多いです。そもそもフィンランドの秋や冬は暗くて寒くて雪が多いため、こうした行事がなかなかできない(またはあまりふさわしくない)などの理由があります。1ヶ月ぐらい夏休みがあると、毎週誰かの結婚式や新築パーティ、宗教的な儀式などがあり、親戚一同集まることが多いので、日本人の私にとっては「お盆」のような感覚です。

フィンランドは8月中旬ごろから新学期がはじまるので、特に大学1年目にあたる学生にとっては、家族と離れて新しい生活が始まる学生寮への引っ越しなどがあります。またビジネスマンにとっても、転職などで勤務先が変わることもこの時期多く、夏休みにリフレッシュして新天地に向かう人もいます。

新緑や太陽の光が眩しい5月から8月の季節。この季節が一日でも長く続きますように、という願いとともに、自然の恵みを受けて身体の休養を行うフィンランド国民。北欧の気候ならではの過ごし方ですが、しっかり休んで充電することはどこの国にいてもやはり大切なことだと実感しています。

2018/07/27

海外だより:フィンランドより一覧

海外:フィンランドよりの関連記事