日本の輸出コンプライアンス管理は国際的な安全保障の観点から、リスト規制とキャッチオール規制の2つの側面からダブルチェックする
しくみが前提となっています。
リスト規制においては、貨物そのもののスペック判定と役務(技術)の判定が求められます。
今回はリスト規制の中でも、役務(技術)の判定にフォーカスして考えてみましょう。
■役務(技術)の判定とは
貨物の設計・製造・使用に必要な特定の技術は、輸出コンプライアンスの対象としてリスト規制で規定されています。
では具体的にどのような技術が対象となるのでしょうか。
設計とは製造過程の前段階で必要な技術のことを言います
・総合的な設計・レイアウト
・設計研究・解析・概念
・プロトタイプの試作・試験
・設計データ
・設計データを製品にするための技術
などが相当します。
製造とは製造工程で必要な技術で
・生産エンジニアリング
・製品化技術
・アッセンブリ技術
・検査・試験・品質保証
などとなります。
使用とは貨物を使用するために必要な技術のことで
・装置に組み込まれたプログラム
・据え付け
・操作
・保守点検
・修理
などのこと指します。
これでは対象となる技術の範囲が広すぎて具体的に判定をおこなうことが難しいケースも出てきます。
役務(技術)の判定と表裏一体につきまとうのが「公知の技術」です。
■公知の技術とは
役務(技術)の判定では、「公知の技術」は許可不要と規定されています。
公知の技術とはどのような場合をさすのでしょうか
・技術が商品カタログに記載されている
・技術が書籍・雑誌・新聞で公開されている
・技術がインターネットで公開されている
などが対象といわれています。
「公知」にするか、してよいかどうかは輸出管理の問題ではありません。
技術を「公知化」させることで企業や技術の競争優位性に影響を与えることもありえます。
各企業で検討すべき技術管理ポリシーとなります。
役務(技術)は、貨物輸出だけに関係するのでなく、商談開始の段階から考えるべきでしょう。
秘密保持契約や共同開発契約などは商談開始時から確実に準備をすすめ、
・提供する技術
・提供しない技術
を特定することで輸出コンプライアンスとして考えるべき役務(技術)の絞り込みができるでしょう。
商談ごとにケースバイケースで検討することが必要でしょう。
2015/09/17