昆虫食といえば、一部地域の食文化として根付いているものの、現代の日本では珍しく、拒否感やマイナスイメージの方がしっくりきます。
しかし、昆虫食に対するイメージが徐々に変わってきたと感じます。それは、無印良品がコオロギせんべいを発売し、入荷と同時に売り切れていることや、昆虫を食品や飼料として扱うスタートアップ企業の注目度から感じられます。
EUでは新規食品(ノベルフード)に昆虫が追加され、EU全域での流通が可能です。フィンランドなど北欧でパンやクッキー、スナックなどに加工され自然食品店で売られています。
そもそも世界では1900種以上の昆虫が食べられています。内訳は甲虫31%、芋虫18%、ハチ及びアリ14%、イナゴなど13%となっています。少なくとも20億人の伝統食の一部なのです。
昆虫は環境負荷の低さ、栄養価の高さ、SDGsの観点からも注目されています。国際連合食糧農業機関(FAO)の2013年食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書によれば、ヒトの食料、畜産物の飼料としての可能性を指摘しています。
そのメリットは、
・栄養豊富。高脂肪、高たんぱく、食物繊維、ミネラル豊富。ただし、昆虫は種類が多く栄養価もバラバラ
・動物の飼料としての可能性。人工的に飼育しやすく、近年の飼料コスト上昇に対応できる
・採集であれ、養殖であれ、小規模な企業や社会的弱者でも取り組みやすい
・飼育時の環境負荷が家畜に比べて少ない
・廃棄物を食べて育つ種の場合、資源の有効活用ができる
デメリットは、
・日本などまだまだ法規制のない国が多く、安全性の問題点。自然由来であれば、寄生虫や細菌汚染の可能性が考えられる
・生態系に与える影響
・甲虫はエビやカニに近いことから、甲殻類アレルギーを発症する恐れ
流通に法規制や規格がないとはいえ、輸入の際は一般の食品や動植物同様の法規制を受けます。
◇生きた昆虫を輸入
税番:0106.19-000 基本税率無税
法令:「ワシントン条約」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「植物防疫法」「家畜伝染病予防法」
これらの法律に抵触しないか、必要であれば検査や許可が要ります。一緒に輸入される植物物についても植物防疫法による検疫対象となります。
また、輸入禁止地域から発送又は経由して輸入される特定の植物、昆虫、ダニ、細菌等の有害動植物、及び土又は土の付着した植物等は、試験研究の目的等で農林水産大臣の許可を受けた場合以外は輸入してはならないと定められています。
外来生物法飼育等手続きフローチャート
http://www.env.go.jp/nature/intro/1law/shiyou/flow.html
特定外来生物
http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html
◇乾燥や冷凍したもの、死んだ昆虫で食用のものを輸入
税番:0410.00-200 基本税率15% WTO協定9% 特恵4.5% 特別特恵/FTA無税
法令:「食品衛生法」
◇水煮や調製品を輸入
税番:2106.90-
穀物の含有量によって下3桁が変わります。「食品衛生法」のほか、「輸入割当」や貿易管理令の「輸入承認」、「指定乳製品等輸入業務委託証明書等」などが必要なものもあります。
◇飼料用の調製品なら
税番:2309.90-
こちらも、貿易管理令の「輸入承認」、「指定乳製品等輸入業務委託証明書等」「輸入検疫証明書等」などが必要なものもあります。
フィッシュミールの代わりに昆虫ミールを家畜用飼料にすることで、コスト減と魚のヒトへの供給量増加に期待ができます。コオロギやイエバエ幼虫を養魚飼料原料にし販売している企業もあります。
昆虫食はまだまだ世界中で食べられているものではありません。農産物にとっては害虫ですし、見た目やイメージで抵抗感があるのもわかります。(私もまだ未体験ゾーンです。)
しかし、はちみつやロイヤルゼリーなどは蜂が吐き出したもので出来上がるのです。漢方薬の原料には虫も含まれます。そう考えると、意外に身近だったのね、という気がします。
食文化のポテンシャルがある国を含め、タンパク資源の選択肢の一つとして、世界中に広く普及する日は遠くないように思います。
参考記事:Terve!フィンランドで未来の食が出現?!
https://www.rakuraku-boeki.jp/finland-dayori/2018-10-06
2020/11/30
simalu 元通関士の実践コラム