11月11日と言えば、記念日が乱立する日。
漢数字にすると十一がプラス極とマイナス極に見えることから「電池の日」。1が並んでいるので、その見た目から「ポッキー&プリッツの日」や「立ち飲みの日」「チンアナゴの日」、「美しいまつ毛の日」といったものまであります。
一方、お隣の国中国では「独身の日」です。
もともとは南京大学の学生が考えた記念日ですが、その記念日を近年盛り上げているのが、「タオバオ(陶宝)」や「Tモール(天猫)」などECサイトで実施される大規模なセールです。
2009年にアリババが始めた独身の日のセールは「双十一(シュアンシーイー)」と言います。今ではアリババグループだけでなく、他のECモールもセールを実施しています。
毎年売上高を更新しており、セール開始何分で取引額がいくらに達したかという速報が、さらにセールを盛り上げています。今年も「天猫」だけでセール開始1分36秒で約100億元(1元=15.5円)を達成。総取引額は2684億元だったようです。
中国経済は減速したとはいえ、動くお金は日本とは桁違いですね。開始数分で取引額がはね上がるのには、ちょっとしたカラクリがあります。実は10月中旬から予約販売が始まり、デポジットを払うことで11日に注文が成立。消費者はセール価格で取引でき、売手は1カ月以上販売期間を担保できるというわけです。
取引額上位はスマホや電化製品で、APPLE、小米、HUAWEIやハイアール、LENOVO等のメーカー品がよく売れています。中国人はAPPLEが大好き。米中貿易戦争どこ吹く風といった様相です。
他にも、NIKEやadidas、ZARAの旗艦店が取引額上位にいます。日本ブランドではユニクロやパナソニック、資生堂、花王などがよく売れます。特にユニクロは売上ランキングTOP10入り。日本ブランドも含め、輸入商品は全体の1割ほどで、海外ブランド大好きな中国人の消費を底上げしたと言えます。
日本製品など海外製品を取り扱っているのは「天猫国際(Tmall Global)」や「海dun全球(JD Worldwide)」(京東集団)が大手です。こららのECモールでの買い物は個人輸入に近く、越境ECと呼ばれます。天猫国際は中国に現地法人を持たなくても出店できます。
毎年日本の製品でよく売れているものの一つが、おむつやおしりふきといったベビー用品です。(「独身の日」はもはや関係ありません)しかも人気があるのは「メイド・イン・ジャパン」のものです。
日本メーカーのおむつであっても、中国で製造されたものは評価が下がるようです。この価値観、日本とは逆ですね。中国人は自国製品に対する不信感が強く、特に子供には少々高くてもいいものを使いたい、という気持ちが強いです。
また、実店舗で売っているものには偽物が混ざっている可能性もあるので、メーカーのECモールの旗艦店で購入することを選ぶ傾向があります。前述のおむつを例にとると、ユニ・チャーム(ムーニー)は現地工場で生産する地産地消のスタイル。実店舗も構えましたが、EC市場が席巻していく中で、伸びが鈍化してしまいました。
一方、中国進出後発組の花王(メリーズ)は、メイド・イン・ジャパン。EC対応も成功し、急速にシェアを伸ばしています。
日本製おむつの人気に火が付いたのは2012年頃です。中国の転売業者が日本のドラッグストアでおむつを買い占め、中国に転売。日本のドラッグストアからおむつが消え、騒がれました。
その後、2019年1月に中国で電子商取引法(EC法)が施行され、転売ビジネスの取り締まりを強化。転売業者も含めた爆買いは落ち着き、それまで爆買いの恩恵を受けていた小売業者やメーカーは売り上げを落としました。
※参考サイト:「中国爆買いが終えん、トレンドは越境ECへ?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-06-07
転売が横行すると、価格の高騰やブームが去った後の安売りなど、メーカー側の価格やブランドイメージのコントロールが効かないというリスクがあります。
EC法では、それまで野放し状態であった転売を目的とした小規模事業者も「EC事業者」としての登録と納税の義務が課されています。プラットフォーマーの義務や責任も明確になりました。あいまいで無責任な個人を含む転売業者を締め出すことで、一般消費者にとって、ECサイトが購入しやすい環境に整ったと言えます。
そもそも、転売業者頼みのインバウンド消費が、ねじれた状態だったのかもしれません。花王のように、敏感にEC対応した企業が、生き残っていくのだと思います。
2019/11/21