貿易の現場で、しばしば使われる「シップバック(Ship back)」という言葉、場合によって指している意味が若干異なります。
あ、そういえば・・・と思い当たる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、改めてシップバックの2つの意味を整理してみたいと思います。
輸入通関前の保税地域での内容点検時に、しばしば貨物が契約内容と違う違約品であることがあります。
この場合の選択肢として、「積戻し」をするか、一旦輸入して「再輸出」をするかでしょう。
この時、「積戻し」にしても「再輸出」にしても、貿易現場ではざっくり「シップバック」と呼んでいることが多いようです。
ですが、関税法上はこの二つには、輸入許可前か後かという違いがあります。
【シップバック=「積戻し」を指すパターン】
関税法上の「積戻し」とは、外国貨物を日本から外国に向けて送り出すことです。外国貨物とは輸入申告許可前の貨物です。
外国貨物のままですが、税関に対して積戻し申告を行わなければなりません。実質的には輸出となり、輸出申告に準じた手続きが必要です。
インボイスやパッキングリストなどは輸出者と輸入者が逆になるわけですから、改めて買主(積戻し申告上の輸出者)が作成します。
必要に応じて書類審査や貨物検査になることも。積戻し許可後は通常の輸出と同様の手順で船積みします。
【シップバック=「再輸出」を指すパターン】
「再輸出」とは、輸入許可を受けた内国貨物を日本から再度外国に向けて送り出すことです。
保税地域で違約品等であることに気づかず、輸入者の手元に貨物が渡った後に、貨物を送り返す場合に再輸出となります。
違約品等の再輸出は、納付した関税等の払い戻しを受けることができます。ただし、貨物の形状・性質に変更を加えないこと、当該貨物が輸入許可の日から原則6カ月以内に保税地域に搬入されること、が要件です。
再輸出のために貨物を保税地域に搬入後、「違約品等保税地域搬入届」を提出。搬入が確認されると「違約品等保税地域搬入届受領書」が交付されます。
その後、通常の輸出手続きを行います。関税等を払い戻してもらうには、「違約品等の輸出に係る関税払戻し(減額・控除)申請書」2通と以下の添付書類を税関に提出します。
添付書類
1.「輸入許可書」またはこれに代わる税関の証明書
2.「違約品等保税地域搬入届受領書」
3.違約品であることを証明する書類
シップバックは売主が送り返された貨物を引き取ってくれなければ成立しません。契約時には、万が一シップバックする場合の費用負担や現地の輸入規制などを確認しておきましょう。
参考 貿易用語集:シップバック
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/s012
2019/10/07