今年も暑い夏が真っ盛りですね。
暑くなると食べたくなるのが鰻ではないでしょうか。
しかし、近年不漁続き。養殖ウナギはウナギの稚魚を採捕して養殖池で大きく育てたものです。そのウナギの稚魚であるシラスウナギがどんどん捕れなくなっているのです。
これはメディアでも報道されている通りで、価格もどんどん値上がりしています。あまりにも急に捕れなくなり、個体数が激減していることから、絶滅危惧IB種に指定されているくらいです。
本来ならパンダやトキのように、日本はじめ生息地域の国々が協力して種を保存するための保全活動を行うべきなのですが、ウナギについては保全が進んでいないのが現状です。
養殖するために捕るシラスウナギは日本、台湾、韓国、中国などに生息しています。昔は日本の河口でもたくさん捕れ、国産の養殖分は賄えていました。
しかし、足りない分、というか「土用の丑の日」に間に合うように育てることができるシラスウナギは台湾の漁期に捕れるもの。ところが台湾はシラスウナギの輸出を禁止しています。
日本に輸入されてくるシラスウナギの出どころは全てが香港からです。ですが、香港ではシラスウナギ漁がおこなわれていません。どうやら台湾や中国本土から香港に密輸されたものらしいのです。台湾から香港に密輸、香港から日本に合法的に輸出、これがウナギロンダリングです。
また、輸入分以外は国内採捕で賄っています。こちらも正式なルートではなく、無許可で行う密漁や、許可を受けた採捕者が過少報告(無報告漁獲)し無報告分を密売するなどの違法行為による流通分が6~7割程を占めるのだそうです。これらは反社会的勢力の資金源にもなっています。
出所が違法であっても、日本の養鰻場に入れられ大きくなった鰻は「日本産」鰻です。販売時にはどこから来たのか問われません。
ブロックチェーン技術などを利用して、流通をトレースできるようにすれば、適切な取引によるものだけを流通させることが可能です。しかし、利害関係が固定化し、利益を得ている個人や組織がルールの変更に反対しています。
また、小売業者や生協は違法行為による流通がまかり通っていることを認識しながら、販売に対しては特に行動を起こしていませんでした。
日本政府にしても、好ましくないとしながら強く取り締まっていません。まあ、「いろいろ」あるのでしょうね。
しかし先日、イオンが新商品「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」の販売を発表しました。こちらの商品の特徴は「シラスウナギの産地までトレースできる」こと。
大手の小売業者からこのような取り組みがされたことは大きな意義があります。他の小売業者や生協に対するインセンティブとなります。
イオンはこのほか、インドネシアで「持続可能なウナギ養殖」のプロジェクトを進めています。このような取り組みがこの先先細っていくであろう資源の持続的利用のモデルになれば、と思います。
養殖池で育てた魚の卵を稚魚に、稚魚から成魚に育てる完全養殖技術が確立されれば、ウナギ不足やさらには絶滅という危機に陥る状況は避けられます。しかし、ウナギは謎多き回遊魚。エサの開発や水槽で育てるとなぜか全てオスになるなど、難しいのだそうです。
消費者としてどういう行動するか、それは究極的にはトレースできない食品は買わないことです。安全性も高く、何か問題があった場合に改善策や対応がしやすい、「産地までトレースできる食品」を選ぶといいのではないでしょうか。
2019/08/06