仮想通貨ビットコインが世間を賑わせた頃、「ブロックチェーン」という言葉を初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか?
物流業界にもブロックチェーン技術を活用すると様々なメリットがあり、実用化が期待されています。
海運会社最大手のMaersk(マースク)とIBMは合弁会社「TradeLens」(トレードレンズ)を設立しました。
トレードレンズが提供するのは、参加するすべての企業や公的機関が、海上コンテナ輸送で発生するすべての荷動きと関係書類をリアルタイムに共有できるシステムです。
欧米を中心に世界に広いネットワークを持つMaerskはアメリカ、EU圏だけでなく、シンガポール、ペルー、オーストラリア、サウジアラビアなどの国や地域と連携しています。
2019年に入ってからは、サウジアラビア政府の協力を得て実証実験を行っています。サウジ政府と民間を結ぶ貿易シプラットフォーム「FASAH」にトレードレンズがインテグレーション(統合)し試験運用されています。
また、韓国のSamsung SDSは韓国税関サービス(KCS)及び48社の海運会社や保険会社、政府機関が参加するコンソーシアムと連携してブロックチェーンを利用した自動輸出通関システムの開発を進めています。
日本では、NTTデータが中心となり船会社、銀行、保険、物流、輸出入者など貿易業界に関係する代表13社でコンソーシアムを発足。貿易情報連携基盤の実用化に向け、各セクションで実証実験を行っています。
では、ブロックチェーン技術の活用は物流分野にどのようなメリットがあるのでしょう?
■複雑で非効率的な貿易のプロセスを自動化することでスピードアップ。
契約書やインボイスなど大量の紙に依存するやり取りを即座に共有できるようになり、事務作業は大幅に効率化します。
情報改ざんリスクも低いことから、正確にデータ管理できます。
■参加者全員が安全に情報の共有・監視ができる。
■商品の現在地情報を記録することで、過去も含めどこにあるかが追跡できる。
在庫管理も容易になります。サプライチェーンに乗せれば余剰在庫削減につながります。商品紛失のリスクも減ります。万が一商品が紛失した際にはどこでなくなったかが分かるため、誰の責任かはっきりします。
また、従来の中央集権型のシステムでは一つの企業のサーバーに管理されるため、規模が大きくなればなるほど大きなサーバーが必要になり、費用も膨大になります。そして管理を一企業に頼れば、貴重なデータがブラックボックス化するリスクが指摘されていました。
ブロックチェーンの特徴は一つのサーバーで管理しなくていいことです。取引履歴等の情報を「ブロック」にまとめて、鎖のように繋げ、データを分散管理するのがブロックチェーンです。
ネットワークでつながった参加者全員に情報が分散され、しかも各ブロックは改ざんすれば異常値が検出され、不正がとても困難です。透明性が高まり、信用も確保されます。
なんだかいいことづくしですが、果たしてスムーズに進むのでしょうか?海貨業界は長年にわたってIT化が今一つ進んでいません。そこをどう切り開いていくのか、今後も注目していきたいと思います。
2019/07/11