輸入者にとって関税は悩みの種ではないでしょうか?
関税が少しでも安くなる制度があるなら利用したいですよね。
そこで今回は関税が無税又は低税率で輸入できる、「関税割当制度」についてお話しします。
関税割当制度は、輸入数量にある一定の枠を設け、その枠内は無税又は低税率(一次税率)、枠を超えた輸入に対しては高税率(二次税率)をかけるという制度です。
これは、一次税率で消費者など需要者を保護し、二次税率で生産者を保護する目的を満たすものです。
一定数量以内の輸入しか認めない「輸入割当制度」とは異なり、「関税割当制度」では一定数量以上は高い税率が適用されるものの、量的制限は受けません。
しかし、すべての品目で適用されるわけではありません。
対象品目は、
農林水産省所轄品目:
とうもろこし、ナチュラルチーズ、麦芽、糖みつ、無糖ココア調製品、トマトピューレー及びトマトペースト、パイナップル缶詰、その他の乳製品、脱脂粉乳、無糖練乳、ホエイ等、バター及びバターオイル、雑豆、でん粉、イヌリン及びでん粉調製品、落花生、こんにゃく芋、調整食用脂、繭及び生糸(17品目24枠)
経済産業省所轄品目:
皮革、革靴(2品目4枠)
一次税率適用枠は政令で定められています。農林水産省所轄品目の数量枠は、年に一回定められるものと、半期ごとに定めるものとがあります。経済産業省所轄品目は割当枠の総量を年度枠、保留枠、再割当に分けて設定しています。
それぞれ、関税割当を受けるためには品目を所轄する省に申請します。申請すると関税割当証明書が交付され、割当を受ける輸入の際に税関に証明書を提出し、裏落としで輸入数量を管理します。
割当の数量枠や申請要件などは、所轄省の公表を見れば知ることができます。それぞれ要件が異なるため、輸入を予定している事業者は事前に公表で確認しなければなりません。
例えば、経済産業省では例年3月上旬から中旬ごろに次年度分の割当を公表しています。年度枠、保留枠いずれか一回のみ申請でき、再割当分は条件を満たす場合のみ割当が解放されます。また、皮革、革靴の割当要件には、前年度の輸入実績などが反映されるため、これから輸入を始める事業者は割当を受けることができません。
以上が一般の関税割当制度ですが、これとは別にTPPなど経済連携協定(EPA)による関税割当があります。それぞれのEPAごと、品目ごとに違うので、こちらも公表を確認する必要があります。
割当の管理方法も各EPAにより違います。輸出国管理方式の場合、輸入者が割当申請し、輸出国の発給する証明書に基づき先着で割り当て、所轄省が証明書を発給します。輸入者の事前審査が比較的緩やかです。輸入国管理方式の場合、通常の関税割当と同様に、事前に割当を行います。こちらは輸入者の事前審査があります。
いかがでしたでしょうか。関税割当制度を利用して輸入すると、大幅に関税が安くなります。事前の確認や揃える書類が必要など手間はかかりますが、とても便利な制度ではあります。また、無事に割当を受けることができたら、通関業者に証明書を取得していることを必ず伝えましょう。輸入者の自己申告がなければ、通関業者が割当があることに気づかないからです。
農林水産省HP(関税割当関係情報)
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/boueki/triff/t_kanwari/index.html
経済産業省HP(関税割当 皮革・革靴)
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/01_kanwari/kanwari.html
2019/01/19