ここ数年、ヨーロッパを中心に脱石油原料ブームです。
マイクロプラスチックが海に蓄積され、クジラの体内から大量に発見されるなど、石油を原料としたプラスチックが環境に悪影響であることが取り沙汰されています。
そんな流れを受けて、各アパレルメーカーは脱石油原料、脱プラスチック素材の開発が進んでいます。
東レでは植物由来の原料を使った人工皮革を開発したと発表しました。またH&Mでは、2030年までに持続可能な資源由来の材料やリサイクルされた材料の比率を100%にすると打ち出しています。
アパレル業界では、デザイン性+着心地・機能性ブームがあり、さらに環境への配慮という要素が加わった流れが来ているようです。
そこで今回は新素材の一つ、植物由来の再生繊維に着目して税番解説をしてみたいと思います。
植物由来の再生繊維は木材パルプや天然繊維に含ませるセルロース(炭水化物の一種)を取り出して化学薬品で溶かした後、細長い繊維にしたものです。代表的なものにレーヨンやキュプラがあります。
原料が木材パルプや綿など植物性なので、
「第14類・植物性の組み物材料および他の類に該当しない植物性生産品」
「第47類・木材パルプ、繊維素繊維を原料とするその他のパルプ及び古紙」
「第52類・綿及び綿織物」
「第53類・その他の植物性紡織用繊維及びその織物並びに紙糸及びその織物」
などが分類の候補に挙げられるでしょう。
14類、47類の解説を見ると、紡織用の物は第11部に属する、とあるため、植物性の繊維は52類もしくは53類があたります。
ここで注目しなければならないのが、繊維の製造工程です。天然繊維をそのまま撚って紡織用にしたものと、繊維から化学的に抽出して製造したものとでは分類が分かれます。
レーヨンやキュプラなどの植物系再生繊維は繊維から抽出したセルロースやでんぷんなどの天然有機重合体を化学的に処理して製造したものです。
これは、「人造繊維」であり、人造繊維の長繊維及び短繊維に分類されます(54類、55類)。人造繊維はポリアミドやポリエルテル、ポリウレタンなど石油系が「合成繊維」、植物系が「再生繊維又は半合成繊維」に分けられます。(石油系、植物系、と乱暴な言い方をしているのはご容赦ください。)
ペットボトルなどをリサイクルした石油系リサイクル繊維は「合成繊維」に分類されます。
「再生繊維」というと、何かの原料を再生させたものかな、と思うでしょう。しかし、貿易世界の品目分類上は、天然原料を化学処理して抽出された有機重合体を原料とするものが再生繊維や半合成繊維です。
そして、衣類など最終製品になった場合の品目分類は、上記の分類をもとに細分化されています。
植物性の新素材は、商品の廃棄時においても燃焼時の燃焼熱が低いことや、生分解性などの特長あります。意外な原料から生まれる新素材、今後も注目したいと思います。
2018/12/27