ASEAN諸国内でも後発組に属するカンボジア、ラオス、ミャンマーはCLM諸国と呼ばれています。
これらの国々は、チャイナ・プラス・ワン、タイ・プラス・ワンの受け皿として、近年関心を集めてきました。
CLM三国はASEAN内でも経済発展の遅れた低所得国に属し、2018年現在は特別特恵受益国として認められた「後発開発途上国(LDC)」です。
LDCであることは、国としてのステータスが低いというデメリットはありますが、関税の優遇措置があることやODAが受けやすいことなど、メリットも多くあります。企業の進出や外国からの支援に対し、敷居を低くし、経済発展を促しています。
ラオス、ミャンマーはこれらの恩恵も受けつつ、目覚ましい経済発展を遂げ、LDCからの卒業要件を満たすことになりました。
LDCは世界に47か国(2018年現在)あります。LDCに認定されると関税の優遇措置やODAを受けやすくなります。
LDC認定基準は以下の3つで、一定値に満たない国がLDCに認定されます。
1.1人当たり国民総所得(GNI、3年平均)
2.人的資源開発の程度を表すための指標(HAI)
3.外的ショックからの経済的脆弱(ぜいじゃく)性を表すための指標(EVI)
そして、その一定値を2項目以上上回れば、LDCを卒業となります。
ただし、一度卒業要件を満たしたからといって、すぐに変わるわけではありません。3年後の2021年に再度要件を満たせば、2024年にLDC卒業となります。
では、LDC卒業後、2国が関わる貿易にどのような影響があるかを考えましょう。
LDC国には関税の優遇措置が与えられており、特別特恵関税(GSP-LDC)が適用されるため、ほとんどの製品を無税で輸入できます。しかし、LDC卒業後は一般の特恵関税制度が適用されるため、関税無税の品目が大幅に減ります。
特にミャンマーは縫製品の委託加工が多く、対日輸出が伸びている国です。GSP-LDCが使えなくなれば、縫製品はTシャツで7.4%など、7~10%以上の関税がかかります。
日本との自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結していれば、FTA・EPA特恵税率が適用できますが、現在のところ締結していません。ただし、2国はASEAN加盟国ですので、AJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)を利用することができます。原産地規則を満たし、原産地証明書を取得、直送条件を満たせばEPA特恵税率を適用できます。
なお、ASEAN加盟国ではありませんが、バングラデシュもLDC卒業要件を満たしています。ミャンマー、ラオスとともに2024年LDC終了となる見込みです。また、カンボジアも近年GDP成長率が7%台と好況ですので、数年内のLDC卒業が予想されています。
関連コラム:知っておきたい特恵関税制度と特恵卒業
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-02-22
外務省HP:後発開発途上国
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html
2018/12/08