昨年7月、日本の、いや世界の廃棄物事業者にとって衝撃的な発表がされました。
それが、中国の「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」です。
「計画」では外国ゴミの国内持ち込みを禁止し、国内で出される固形廃棄物の無害化、資源化再利用を促す、としています。
業種・種類ごとに輸入禁止のタイムテーブルを策定。
2017年末前に、環境への危険リスクが高く、人への健康被害が大きい固形廃棄物の輸入を全面禁止、2019年末までには国内の資源ごみで代替え可能な固形廃棄物の輸入を縮小していく予定です。
全面禁止となった固形廃棄物は、生活ごみとしてだされる廃プラスチック、未処理の古紙、皮革製品・繊維系の廃棄物、汚泥、医療廃棄物、バナジウムスラグなど。
中国は長年にわたり、世界各国から廃プラスチックや古紙など再生利用できる廃棄物を輸入してきました。その理由の一つは、中国国内の原料不足を補うためです。廃プラスチックは処理してペレットなど原料にし、中綿やプラスチック製品を作ります。石油原料からプラスチック製品を作るより、廃プラスチックを輸入してリサイクルした方が簡単。また輸出側も中国でリサイクルした方が安上り。双方の思惑が一致したこともあって、中国の廃プラスチック輸入量が膨大な量になりました。ピーク時(2012年)で888万トン、2016年では735万トンです。
国別にみると1位:香港24%、2位:日本12%、3位:米国9%です。日本は廃プラの50%を中国、32%を香港に輸出しています。日本から香港に輸出されたものが中国に輸出されるので、最終的にはほとんど中国行きです。
ではなぜ、長年の方針を転換して、廃棄物輸入禁止にかじを切ったのか?それは、関係各部門が環境リスクに配慮し、輸入管理してきましたが、汚染物質やその他のごみの混じった粗悪・悪質な貨物が大量に輸入されていること、その影響で環境汚染が深刻化していることなどがあげられます。公害対策が十分でない加工業者も多く、汚染物質が河川に垂れ流されているといいます。
さらに、中国国内のゴミ事情も関係しています。中国は経済発展とともに、ゴミの量も増え続けています。埋立地も満杯状態で、都市部郊外ではゴミの山が築かれています。ゴミ処理の技術や分別回収も進んでいない状況で、特に都市部の生活ごみ処理が深刻な問題となっています。
海外からリサイクルしやすい状態にした廃棄物を受け入れていたのでは、国内の分別リサイクルが進みません。また、国内廃棄物だけでも環境汚染がひどいのに、さらに海外の汚染物質付き廃棄物の買い取るなんてお断りだ、というのも本音ではないでしょうか。
さて、人体や環境に有害な廃棄物の輸出入を規制する国際的枠組みに、バーゼル条約(正式名称:有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)があります。有害な廃棄物などの国を越える移動を規制、廃棄物によるリスクから人の健康と環境を守る条約です。
バーゼル条約を実施するための日本の国内法はバーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の二つです。
バーゼル条約、バーゼル法、廃棄物処理法と輸出入の関係はまた、次回以降のコラムでお話ししたいとおもいます。
2018/05/18