外国を行き来する海上コンテナや船舶には、様々な動植物が付着してしまいます。
今、陸揚げされた海上コンテナ内で火蟻(ヒアリ)が見つかるという問題が起こっています。
火蟻は猛毒性があり、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも入っています。
このように危険な外来生物がコンテナや船舶にくっついて国内に持ち込まれるケースは少なくありません。
生態系や漁業などにも影響を与えるため、国際条約や法律による規制が進められています。
一つは「船舶バラスト水規制管理条約」です。バラスト水とは、船体を安定させるためにバラスト(船底に積む重し)として用いられる水のことで、貨物船が空荷で出港するとき、港の海水が積み込まれ、貨物を積載する港で船外に排出されます。積み込む港と排出する港が異なるため、海水に含まれる多種多様な水生生物が多国間で行き来してしまいます。水生生物は移動先で環境被害や健康被害、漁業へ影響を及ぼしています。
そこで、バラスト水とその沈殿物の管理のための国際条約を締結しよう、ということになりました。バラスト水管理のためのガイドラインが策定され、締約国は指定された港・ターミナル内に沈殿物の受け入れ施設を持つことや、船舶に対する定期検査、国際証書の発給などが義務付けられています。
有害動植物に寄生されている恐れがあるものに、木材こん包材があります。付着した動植物から輸入国に病害をもたらすことを予防するため、木材こん包材について植物検疫措置に関する国際基準「国際貿易における木材こん包材の規則」(ISPM No.15)に沿った消毒や表示等が輸出国に求められます。
対象のこん包材は、厚さ6ミリ以上の貨物の積載、梱包、下敷き、支持又は固定に使われるパレット、木箱、木枠などの非加工木材です。パーティクルボードやベニヤ、接着剤や熱処理などにより加工された木材は対象外です。燻蒸や消毒など適切な処理がされた木材こん包材には認定されたマークが付けられます。
もし、輸入地点で要求されたマークがなかったり、有害動植物の発見が処理が有効でなかったことによる場合、国家植物防疫機関がそれに応じた対策をとります。日本であれば植物防疫所となります。必要であれば、留め置き、不適合材の除去、処理、破壊、又は返送もあります。また、生きた有害動植物が発見された場合は、輸出国又はこん包材の製造国に通知されます。
火蟻の件でも見られたように、海上コンテナ内で危険生物が見つかることもあります。海上コンテナは通常、積み荷をデバン(荷下ろし)した後、きれいに洗浄しなければなりません。もし、内部に生物がいたり、その卵や死骸を見つけたりした場合は、外来生物法に基づき、環境省に連絡します。
ちなみに、外来生物法では、輸入品に付着・混入するなど非意図的であっても、特定外来生物の「輸入」と考えます。特定外来生物を許可なく輸入することはできませんので、その付着・混入が確認された場合は、環境省から消毒、廃棄が命令されます。
特定外来生物とは、外来生物のうち、特に生態系等への被害が認められるものとして外来生物法によって規定された生物です。
規制や対策はとられているものの、日本は多くの国・地域から多種多様なものを輸入しています。全ての輸入品や多国間を行き来するコンテナなどを検査するのは不可能です。また、アリやクモのような小さな生物の侵入を防ぐのは容易ではありません。結局、どれだけ関係者が気づけるか、気づいた時の素早い対応が重要ということでしょう。
船舶バラスト水規制管理条約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/trt/page22_000988.html
植物防疫所 木材こん包材の輸出入
http://www.maff.go.jp/pps/j/konpozai/index.html
特定外来生物等一覧
https://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/list/
2017/07/11