特恵関税は一般の関税率よりも低い税率を適用して途上国の経済支援をするために設けられています。経済発展を遂げた国については適用対象外となります。これを特恵卒業と言いますが段階があります。|知っておきたい特恵関税制度と特恵卒業

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公開日:2017.02.22  / 最終更新日:2017.03.10

知っておきたい特恵関税制度と特恵卒業

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特恵関税とは、開発途上国、または地域を原産地とする特定の輸入品に対し、一般の関税率よりも低い税率を適用して途上国の経済支援をするために設けられています。

「特定の輸入品」とあるように、対象品目と税率が法令により定められています。これを定めた法令が関税暫定措置法及び関税暫定措置法施行令です。

農産品の一部と鉱工業品のほぼすべての品目に対して、特恵税率が適用されます。

さらに、後発開発途上国からの輸入に関しては、ほぼすべての品目が無税で、これを特別特恵(LDC)関税といいます。

特恵国及び特別特恵国一覧は以下の通りです。
http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm

ただし、特恵関税又は特別特恵関税を適用した輸入の増加が原因で国内産業が損害を被る場合は、政令によりその品目の特恵及び特別特恵関税の適用が停止されます。特恵停止品目は税関HPに公表されます。

年度途中で適用停止になることもあり、現場の通関士も常にチェックしています。現在特恵適用で輸入されている場合は随時確認しておきましょう。

開発途上国の経済支援のための制度であるため、経済発展を遂げた国については適用対象外となります。これを特恵卒業といいますが、特恵卒業には3段階あります。

1.高所得国にかかる特恵適用除外措置(部分卒業)
2.高所得国にかかる特恵適用除外措置(全面卒業)
3.国別・品目別特恵適用除外措置

平成29年度の部分卒業は中国が原産国の特恵適用品目に多く該当します。
中国はGDPが公表で世界2位の国です。
急成長を遂げ、とっくに高所得国に分類されておかしくない国と思うのですが、まだ特恵が適用される国、つまり開発途上国と認められていました。

しかし、平成31年に全面卒業予定です。
また、中国以外にも、ブラジル、メキシコ、マレーシア、タイが特恵全面卒業予定となっています。

メキシコ、マレーシア、タイはすでに日本と2国間協定国であり、特恵卒業となっても経済連携協定(EPA)税率が適用されるため、それほど影響はないでしょう。

例えば、プラスチック製の食卓用品、台所用品(HSコード3024.10-000)は特恵税率無税ですが、EPA税率も無税です。

ここで、関税率の種類と優先順位についてお話ししますと、関税率は品目によっても定められていますが、原産国によっても異なります。大きく分けて、国の法律に基づいて定められた国定税率と国際条約に基づいて定められた協定税率があります。

●国定税率
  基本税率
  暫定税率
  特恵税率(EPA税率と区別するため一般特恵税率とも言います。)
  入国者の輸入貨物に対する簡易税率
  合計20万円以下の少額貨物に対する簡易税率
●協定税率
  WTO協定税率
  経済連携協定(EPA)税率

これらの税率は原則として、EPA税率、一般特恵税率、WTO協定税率、暫定税率、基本税率の順に優先して適用されます。
ただし、
・一般特恵税率とEPA税率の適用には原産地規則を満たした上で原産地証明書が必要であること
・EPA税率と一般特恵税率が設定されている場合は一般特恵税率が超えない限りEPA税率が優先
・協定税率の適用は暫定税率又は基本税率より低い場合に限る(協定税率、暫定税率、基本税率のうち低い税率が優先される)

ざっくり言うと、同じ条件下では一番低い税率が適用される、ということです。

例えばカンボジアはアセアン協定締結国ですが、現在は特別特恵国(LDC)です。カンボジア産の革製スリッパ(HSコード6403.59-011)の場合、アセアンEPA税率が30%、LDC特恵税率が無税ですので、LDC特恵税率が優先適用されます。

2017-02-22

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