前回のコラムにも触れましたが、税関検査では思いもよらぬ貨物が混入していることがあります。
麻薬や武器など輸入禁制品はもっての他、これは追加で申告しようにもちょっと時間がかかりそう・・・と現場の通関業者を悩ますものもあります。
インドネシアから家具を輸入しようと輸入申告を行った際の話です。
税関検査の結果、現地での加工に使用したと思われるラッカースプレーや塗料など、インボイスに記載されていない貨物が、カートンに混入していました。
塗料は化学物質ですので、成分が麻薬向精神薬原料に抵触しないかなど、各種法律の輸入禁止物質が含まれていないことの確認が必要です。ラッカースプレーは高圧ガス保安法の適用除外であることの試験成績書が必要です。
明らかに販売に供しないものであるので、試験成績書まで必要ありませんでしたが、すぐには成分などわかりません。シップバックの方法もありますが、どちらにしても要らないものですし、許可前に処分、廃棄しようということになりました。
しかし、これは輸入許可前貨物、つまり外国貨物です。
外国貨物は税関の管理下にあり、輸入者自身が自身のゴミとして簡単に捨てることができません。税関の承認なく廃棄した場合、保税地域が処分の対象となります。
まず、税関に対して廃棄したい旨を理由とともに文書で提示しなくてはなりません。そして、「滅却(廃棄)承認申請書」に必要事項を記載・提出して滅却の承認を受けます。
ここでいう「滅却」とは「焼却等により貨物の形態をとどめなくすること」であり、屑などリサイクルできる状態であってはなりません。リサイクルできる処理は、経済的価値を残すので、滅却とは認められません。
廃棄後の現況により輸入通関手続きが必要となります。屑でも商品として販売するなら通常の通関手続きをして納税しなければならないのです。
承認を受けると税関長に認められた場所で、税関職員立会いのもとに滅却されます。立会いは省略されることもあります。
焼却できるごみであれば地方公共団体のゴミ処理施設、産業廃棄物であれば地方公共団体の許可を得た産廃業者と委託契約を結び適切な処分をしてもらいます。
そして、滅却の確認ができる書類や証拠の写真を税関に提出し、滅却に伴う一連の手続きが完了します。
滅却の承認を受けたものに関しては課税対象とはなりません。しかし、焼却費用や蔵置費用などもろもろの費用が発生します。上記の申告外貨物の場合は保税蔵置場に搬入、滅却予定のラッカー等と本来申告していた貨物とを仕分けし、手続きを進めました。
必要ないからと言って簡単には捨てられないことがお分かりいただけましたか?
安易に「そっちで処分して」とは言わせないように、輸入者輸出者ともに理解しておくことが必要と思います。
2016/10/24