「通関」という言葉、知っていますか?
もちろん、通関業者に勤めている人、商社のような貿易に携わっている人、輸出入を行っているメーカーや仕入れ・販売の会社に勤めている人は知っていることでしょう。しかし、これから輸出入を始めようとする人、ましてやその他の一般の人たちには、「通関」という言葉は、「それって何?」と思わず口にしてしまう馴染みのうすい、耳慣れない言葉でしょう。
昔の話ですが、とある通関業者へ就職し念願の通関士になって間もなく、倉庫の作業員の人から「税関士」と言われショックを受けたのを覚えています。実際、「通関」という言葉は、新聞などで貿易に関する報道があったときに、貿易の額や量の数字を示しているところに「通関ベース」などと、ひっそりとその言葉が添えられている程度です。ややもすると見逃してしまいます。
因みに「通関ベース」とは、通関業者などが税関へ輸入または輸出申告した申告価格や数量のデータを元にしているという意味で、それらのデータを財務省・関税局というところが輸出入別、国別、月別、年別にまとめ統計をとっています。
今となっては歴史上の言葉「関所」。その代表として箱根関所はとても有名ですね。街道の要所や国境に置かれ通行する人や荷物を調べ、通行料(税)をとり、江戸時代には「入鉄砲に出女」と言われたように、武器や幕府への反乱をふせぎ幕府を守るため人質として住まわせた西国大名の妻子が江戸から出ることを取り締まっていました。
「関所」と呼ばれる場所は現在ではなくなったものの、人が口に入れるもの・食の関所「検疫所」、ペットや畜産物、水産物の動物の関所「動物検疫所」、植物の関所「植物防疫所」という人や動植物、そしてそれらを含めた環境に有害な物質、病気や害虫などが海外から日本に入らないよう、日本から海外へ出ないよう、常に目を光らせ取り締まっている、「関所」という名前こそついてないですが、現代の関所があります。
そして、海外から物が入るとき「関税」をとり(実際には徴収されない物もありますが)、「黒いもの」(拳銃など)や「白いもの」(大麻、覚せい剤など)が海外から日本へ入らないよう、日本から海外へ出ないよう、関税など「税」を徴収し、武器などを取り締まる「関」所である「税関」があります。まさに「税関」は、江戸時代の「関所」のようです。
こうして、人や物が、海外から日本へ入るとき、日本から海外へ出るとき、通るのが現代の「関所」の役割をはたす税関です。
平たく言えば、人や物が税「関」を「通」る、人や物を税「関」に「通」すことが「通関」ということです。
海外旅行へ行くとき、海外旅行から帰ってきたとき、空港で税関に荷物チェック、ときにボディチェックを受け、「何か申告するものはありますか?」、「いいえ、ありません。」などとのやり取り、実はそれも「通関」です。しかし、ほとんどの人は、そうとは思っていないことでしょう。
海外から日本へ、日本から海外へ、物を入れ、物を出すときに税関へ輸入や輸出の申告をして、税関の審査や検査を経て(輸入のときは必要な関税や消費税などを支払い)、税関から許可を受けるまでを「通関」といいます。
今、あなたが飲んでいるビール、着ている服、乗っている自動車、外国製だったら、必ず「通関」されています。くらしに必要な物がそろい、安全にくらしていけるのも、検疫所などと合わせ「税関」という関所があって、そこで働く人たちが真剣に取り締まってくれているおかげです。そう思えば、海外旅行のとき空港で列をなして待たされるのも仕方ないと思いませんか?
2022/01/26
くらしと貿易と通関と
Kyō