私が通関士の資格を取得したのは約30年前です。まだNACCSの導入前であった為、通関書類をかかえて税関へ通う毎日。メールもインターネットも無い時代でしたので、フォワーダーや荷主との連絡はもっぱら電話とFAXという超アナログでの仕事ぶりでした。
貿易業界には6年半在籍し、そのうち通関士として通関業務に携わったのは2年程、最後の1年はNACCS導入時期と重なり、使い方の研修を受けたことを覚えています。一所懸命勉強して資格を取りましたが、通関士として仕事をした期間は長くはありません。
では、「通関士の資格は無駄となってしまったのか?」という本題に対する答えですが、決して無駄ではありませんでした。むしろ資格があったからこそ今があると思っています。
出産を機に一旦仕事を離れてから1年半後、次に就いた仕事は、総合電機メーカーでの輸出に関わる仕事です。通関士資格が必須の業務内容ではありませんでしたが、資格を保有していたことが採用の決め手となりました。
新しい職場は、25年前には既に現在のようなデジタル社会を見据えたモノ創りをしていた誰もが知っている企業でした。当時の私は、コンピューターといえば、オフコン(オフィスコンピューター)しか使用した経験がなかった為、いきなり未知の世界に放り込まれた気がして、たった1年半のブランクが10年位のブランクに感じられたものです。
そこでの9年間の経験はとても有意義なものでした。物事を俯瞰で見た効率的な仕事の進め方、数十年後の社会を鑑みた業務改革、また、何よりOJTにより英語力を鍛えられたことなど、私の職業人生において大きな財産となりました。
その後は、銀行でテラー、培った英語力を活かして自動車メーカーで海外法規事務など、その時々のライフスタイルに合わせて様々な仕事を経験することになります。前職が次の仕事へ、またその次の仕事へと繋がっていきました。
紆余曲折ありながら、現在はファイナンシャルプランナーとして、フリーランスで仕事をしています。FPを目指したのは、幾度かの転職により社会保険制度や税の仕組みに興味を持つようになったこと、仕事をしながら子育て、介護を経験する中で、お金に関する様々な制度の存在を知ったことなどが大きな要因です。
仕事や人生の節目には、金銭的な課題がついて回ることを、身を持って経験しました。知識がないことで不利益を被ることを実感したことも、自分の中で忘れかけていた知識欲に火を付けるきっかけになったかもしれません。こう順を追っていくと、通関士資格があったからこそ今に繋がっていると感じます。
FP資格を取るための久しぶりの勉強は、最初は硬くなった頭をほぐすことから始めなくてはなりませんでしたが、30年前に通関士資格を取得したという自信が、もう一度チャレンジするモチベーションになりました。
FPと通関士、一見何の関連性もない資格のように思えますが、私の中では繋がっています。何より、こちらのサイトでコラムを書かせていただけることがその証明のような気がしています。
今回は、通関士からFPへ転身した経緯を、自己紹介を兼ねて書かせていただきました。次回からは、FPとして、貿易業界で働く皆さんのために、様々なお役立ち情報をお伝えできればと考えています。
2022/1/14
山﨑裕佳子 元通関士・現FPのあれこれ話