貿易では「貨物」と「書類」が別々に動きます。そのために特に海上輸送の場合は細心の注意をはらいながら実務をすすめる必要があります。
最近あった事例をとりあげてみましょう。
・CIFで輸入した貨物の船荷証券BLのオリジナルが見当たらない
・よって、貨物の引き取りができない
・その結果コンテナヤードで保留のまま、保管料が毎日課金されてしまう
■船荷証券は有価証券
航空輸送に使われるAWBは単なる送状であることはよく知られています。航空輸送では短期間での輸送が可能なために、書類を別に郵送している時間がありません。海上輸送と違って、貨物と書類が同時に動いています。
一方、海上輸送においては貨物と書類が別々に流れています。書類の中でも船荷証券は重要な書類で、国内取引で使われている手形と同じく、有価証券として取り扱われています。
銀行が介在し船荷証券を担保にLCでの貿易決済が行われる場合、有価証券として権利者が船荷証券に裏書することで貨物の引き渡しが行われるためです。
最近では、銀行を介在した貿易決済もほとんどが外貨送金で行われます。しかし、LCなどの貿易決済を利用しなくても船会社での書類の取り扱いは変わっていません。船会社から貨物を引き取る時には、依然としてLC決済と同じようにオリジナル書類が必要とされます。銀行決済の場合とまったく同じ条件で貿易実務が行われているのです。
■船荷証券を紛失してしまうとどうなるか
今回の事例ではオリジナル書類が出てきて最悪の事態を免れました。では、最悪の場合はどうなるのでしょうか?
運賃Prepaidの場合、荷主(輸出者)が船会社に運賃を支払い、船荷証券のオリジナル3通を受取ります。輸入者はオリジナル3通全部提示しなくても、1通だけでも貨物の引き取りができます。輸出者は、書類郵送中の紛失を想定して、輸入者にオリジナルを3通発行してもらい、1通ずつ分けて郵送し輸送途上での紛失を防止するのが貿易実務の基本です。
最悪のケースとして、貨物引取人が3人現れたケースが過去にあったそうです。そのようなことから、1通でも紛失すると有価証券の失効手続きが必要となります。手形を紛失した場合と同じく、裁判所への法的手続きをしたうえで、貨物の引取者が現れないことを確認し再発行の手続きとなります。
■サレンダーBLをうまく利用する
煩雑なLCを利用せずに外貨送金で決済しても、貨物を引き取るにはオリジナルの船荷証券が必要となります。船荷証券の紛失事故を防ぐ方法があります。サレンダーBLを利用しましょう。
サレンダーBLとは、オリジナル書類は3通発行されますが、荷主に渡さずに、船会社がその3通の書類を回収してしまう船荷証券のことです。サレンダーBLを使うことで、輸入者はオリジナル書類を提示することなく貨物の引取りができます。
銀行での貿易決済をせずにCIF取引をおこなった場合には、輸出者にサレンダーBLの発行を指示することを忘れないようにしましょう。
当然ですが、サレンダーBLは銀行が担保権を留保できないため、LC決済の場合には利用できません。
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2015/07/29