貿易実務において英語は、さまざまな表現や意味に使われることが多々あります。
たとえば、海外の取引先から「Form Aが欲しい」とメールを受けて、
・急いで原産地証明書の手続きをした
・せっかく送ったのに、相手先はEPA対応の特定原産地証明書が欲しかった
・など
アクションを取ったにもかかわらず、取引先の意に反してしまい戸惑ってしまうことがあります。
Form Aのもつ言葉の意味を正確に理解するのはなかなか難しいようです。
■なぜForm Aと呼ばれるのか?
Form Aは本来は特恵関税が適用できる「特定原産地証明書」のことを指します。
しかし書式がForm Aと呼ばれているため、多くの国でCertificate of Origin(原産地証明書)の意味として使われることがよくあります。
原産地証明書には2種類あります。
一般的な原産地証明書と特定原産地証明書です。
一般的な原産地証明書は、輸出インボイスを証拠に貨物が日本産であることを証明したものです。
輸入商品を再輸出する場合には、輸入したことの証明書類で外国産であることを証明できます。
日本発のすべての貨物に対して発行されます。
これに対して、特定原産地証明書はすべての貨物が対象ではありません。
EPAやFTAなど特恵協定で取り決められた商品に対してのみ発行される原産地証明書なのです。
輸入国で関税の割引が受けられるのは、一般的には特定原産地証明書です。
誰でも低い関税を期待します。そのために相手方から要請されたForm Aは、特定原産地証明書のことを意味する場合が多いということになります。
■実務的にはどうすればよいのか?
・一般の関税率(WTO協定)を調べる
・特恵関税(EPAやFTAなどの特恵協定)を調べる
・関税率の差があるかどうか判断する
どちらも同じ関税率の場合は、複雑な特定原産地証明書よりも、一般の原産地証明書を申請するほうが実務的には楽といえます。
ただし、相手先に関税率に変わりがないことを十分に説明する必要はあるでしょう。
特恵協定は十分な時間をかけて段階的に関税率の引き下げが行われます。
TPP交渉でもそうですが、5年から10年程度の経過期間がもうけられます。
そのため一般の関税率と特恵関税に違いがあるかどうか調べる必要があるのです。
意外にこの点を理解している輸入者は少ないように思えます。
Form Aであたふたしないように、まずは関税率を調べてから実務対応をしましょう。
蛇足ですが、Form Eという英語表現も貿易実務で使われています。
中国ASEAN自由貿易協定で使われる原産地証明書のことです。
Form Aと間違いやすいので気をつけましょう。
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