先日のネットニュースでとても興味深い記事を読みました。
米東部メーン州のポートランドでギョーザ販売店を営む夫婦が、中国からギョーザ製造機を取り寄せたところ、注文後のメールで届け先が約4,000キロも離れた西部オレゴン州のポートランドとなっていることに気付いたとのことです。
ご夫婦は通関代理店に連絡し、製造機を後日無事に受け取ることができたそうです。港の名前が同じ「ポートランド(Portland)」であったことから起きてしまった間違いなのですが、実は私も日本国内で同じような事態に遭遇したことがあるのです。
もう10年ほど前になるある日、某家具メーカーの輸入者より、「ヨーロッパから家具を輸入しますが納入先が仙台のお客様なので仙台港に着けます」とご依頼がありました。なるほど仙台か、東北の代理店に手配をお願いしなくてはと考え、東北へ連絡を取り納入日など確認して準備万端に到着を待っておりました。
間もなく日本へ到着という頃、輸入者よりアライバルノーティス(以下A/N)を入手したと連絡があり転送いただいたのですが、そのA/Nが東北ではなく九州の船舶代理店から発行されたものでした。あれ、東北に到着するはずなのにおかしいなと違和感を抱き、とりあえずA/Nに記載されている電話番号に電話をかけて問合せをしてみました。するとオペレーターさんから驚くようなことを言われたのです。
「はい、こちらのコンテナ、確かにセンダイ港に到着ですが、お客様が仰っている宮城県の『仙台(せんだい)』港ではなく、鹿児島県の『川内(せんだい)』港に到着となっております」。なんと、同じ「せんだい(SENDAI)」読みだったために、輸出者が間違って鹿児島の川内港行きの船に乗せてしまっていたのです!
私たちにとっては幸い(?)なことに、そのコンテナはCIF契約であり日本到着までの責任は輸出者側にありましたので手配ミスを責められることこそなかったものの、鹿児島県に到着してしまった貨物を宮城県へ運ぶという大仕事の対応が必要となりました。
海上輸送は叶わなかったので陸揚げし、数日かけてドレージ車両にて運送したのですが、高額なドレージ費用が余計にかかることになったのは言うまでもありません(もちろん、輸出者の負担となりましたが)。何とか無事に納入できたものの、輸入者にも輸出者にもフォワーダーにも、かなりの手間と負担がかかってしまいました。
アメリカのポートランド間ほどの距離ではないものの、この「せんだい」間の距離も1,700キロほどあり、軽微なミスはとても言えないものです。どうすれば防ぐことができたかと言えば、やはり輸出者側で、不慣れな場所への到着や納入をリクエストされたら、一度地図上で住所や港の位置を確認するべきだったかと思います。自分がブッキングをした川内港の位置と、輸入者が指示する仙台市内の住所をネットの地図で調べれば、それらがあまりにかけ離れていることは一目瞭然に判明したでしょう。
長年貿易業務に携わっておりますが、ほんのちょっとした気の緩みや見落としで、大きなミスにつながってしまうことが往々にしてあります。冒頭のポートランド誤りのニュースを読んでこの川内(仙台)誤りのことを思い出し、どこで落とし穴が待ち受けているかわからないので今後も気を引き締めて業務を遂行しようと、改めて思いました。
参考記事:
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210706/for2107060006-n1.html
2021/08/05
輸出入よもやま話一覧