日本通関業連合会では現在、「女性通関士支援事業」という取り組みが行われています。女性通関士の活躍と登用を促進するとともに、優秀な人材を毎年採用し、キャリアアップをあきらめることなく活躍できる業界にしていくということを目標としています。
通関業界では、従業員に占める女性の割合が増えて来ていると言われています。確かに、私が就職活動をしていた20年近く前は、まだまだ通関(物流)業界は男社会というイメージが強く、「物流会社に就職することにしたよ」と報告した友人に「え!あんな男社会の会社に飛び込んで働くの!?」驚かれたことを覚えています。今では信じられないことですが女性は一般職でしか採用しないと明言していた物流会社も数多くありました。
それから20年近くが過ぎた現在、物流会社や通関業界に対する男社会のイメージはかなり薄れて来ていると感じます。もちろん日本全体においてそういった男女差別的な職場をなくそうとしている動きがある事の影響も大きいですが、昨今の資格ブームの中で、「通関士」というどこかインテリジェンスを感じさせる名前の国家資格に惹かれて取得を目指す女性も多いのでしょう。
では現場では実際にどれくらいの女性が活躍しているのでしょうか。私の経験を元にしますと、通関部署の中で、女性の占める割合は50%くらいでした。その女性のうち半数位が派遣社員であり、その中で通関士の資格を取得している方はさらに半数位といった割合です。
社員は基本的に社内で通関士を取得している人が配属されることが多いですし、取得していない社員は仕事の合間に勉強をして1年~2年の内に合格することがほとんどでしたので、ほぼ全員の社員が通関士資格を取得しているという状況でした。
と、人数の割合だけで見ますと女性通関士が男性通関士と同等に仕事をしているように思えますが、実際はそれほど同等とは見えませんでした。なぜならいわゆる「管理職」という立場の通関士は全員が男性だったからです。
なぜ女性通関士かつ管理職という立場の人がいなかったか、それはやはり職場環境にあったと思います。通関部署は水商売とよく言われますが理由は自分たちで仕事の量をコントロールできないことにあります。その日に通関しなければならない書類は何時になろうと仕上げなければなりません。
今日が暇だからと言って明日は忙しくなるとは限らず、逆に今日は目が回る忙しさなのに翌日は余裕たっぷり、なんてこともざらにあります。その、仕事量の読めなさゆえに、管理職という立場になると家庭との両立が難しいという現実があるのでしょう。
また、検査の立会いなど力仕事的な業務も多いですし、管理職ともなれば何かあった際に税関への謝罪なども対応しなければならないといったことが、家庭との両立を目指す妨げになっていたと思います。
ですので、通関業連合会という大きな組織が主体となって女性通関士の支援に積極的に動いていただけることは、元女性通関士の一人としてとても喜ばしいことです。具体的にどのような支援があるのか、また別の機会にお話できたらと思います。
参考記事:
https://www.fujibuturyu.co.jp/headlines/210301/03.html
2021/06/29
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