輸入申告は輸出申告に比べて貨物検査となる割合がとても多いです。やはり、日本から出ていくものよりも日本に入ってくるものの方が取り締まりの必要性が高いということなのでしょう。
貨物が検査されるのなんて怪しそうな会社だけですよね、と思わてれる方もいるかもしれません。でも輸入では、時に輸入者の意図しない貨物が入っていることもあるのです。そのため頻度や確率の違いこそあれ、検査は全ての輸入者を対象に実施されます。今回は私が以前直面した、思いがけない貨物が入っていた事例を2件ご紹介します。
その1. 社長へのプレゼント?!
とあるメーカーの貨物が検査になったときのことです。東南アジアからの輸入パレットにはインボイスの品目通り、工具類、ボルトやナットなどの部品類が積みつけられていました。が、1箱、明らかに見た目が工具類や部品類の箱とは違う、ポップでオシャレな箱があったのです!もちろん税関職員がそちらに目をつけないわけはありません。その箱を取り出し、開梱するようにと指示を出されました。
果たして箱の中から出てきましたのは、素敵なデザインの洋食器セットでした。インボイスには記載されておらず、税関職員からの指示で顧客へ確認するも「そんな商品は注文もしていない、わけがわからない」との回答です。そんな説明で納得してもらえるはずもなく急いで現地輸出者へ確認してもらいました。そして得られました回答が「それは社長へのプレゼントだよ!いつもお世話になっているからね」。
プレゼントで売買取引の対象ではないとしても、輸入許可を受けるためにはきちんと輸入申告をする必要があり、そのためには当然ですがインボイスに商品名や価格などを記載する必要があります。輸入者は「今後はそのようなものを勝手に一緒に入れないよう、輸出者へしっかりと伝達するように」という注意を税関職員から受けた後に、インボイスを差し替え、輸入申告を訂正して無事に許可を得られました。
その2. 日本人はブランド物が好きだから?!
こちらも同じく東南アジアから、雑貨などを輸入されていたとあるショップさんのお話です。この時は財布などの革製品を輸入されていました。元々雑貨などは税関の検査対象になりやすいこともあり、貨物のうち数箱を税関の検査場へ持ってくるようにという検査指示が出ました。
開梱してみますと申告通り財布などが出てきましたが、チェックを進めていくうちになんと、一部の革製品に某ブランドの名前がいくつか刻印がされているではありませんか!
インボイスにはブランド品であるなどと一言も書かれていません。これは商標権を侵害する物品、いわゆる偽ブランド品なのか・・・?と税関職員の間にも緊張が走りました。しかし、刻印をよく見てみるとブランド名が簡単に刻まれているだけで、そのブランドを模倣しているような様子は一切見られません。何か違和感があるなという気持ちを抱きつつも輸入者に緊急で確認を取りました。
輸入者もいたって普通の革製品を輸入しているつもりでしたので驚き、すぐに輸出者に確認したところ、回答は「あれはサービスで入れたんだよ!日本人はブランド品が好きなんでしょ?」
偽ブランド品を作っている意図がなかったとしても、勝手にブランドの名前を刻むことは当然許されるものではありません。商標権侵害の恐れがあることから、これらの製品は全て滅却処分となりました。
この2件の事例からもわかるように、思いもよらない貨物が入っていることは往々にしてあります。だから輸入貨物の検査はどんなに信用のある大手企業だとしても決して無くなることはないのです。
2021/02/15
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