寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 最終回東方見聞録」2012/08/15
寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その10 最終回 -東方見聞録 (マルコ・ポーロ)」
「松江をたって、美しい田園や町や村をすぎ、三日の後、もっとも豪華なキンサイ(行在の音訳。今の杭州)につく。このすばらしい都市については、詳細に話そう。美しさといい、豪華なことといい、世界の他の都市よりはるかにすぐれているから、くわしく話すだけの値打ちはある。」
杭州を語る時、よく引用される「東方見聞録」。
元に仕えたヴェニスの商人マルコ・ポーロの旅行記では、「黄金の国チパング」以上に、文庫本で15ページにも及ぶ詳細な詳しく紹介が続きます。
元軍の揚子江以南への進行から、首都の陥落、その後の変わらぬ都市の繁栄の様子、さらには豊かで優雅な市民生活と彼らの美徳に、書中惜しみない賛辞が贈られます。
この美しい情景が今も、そして未来の杭州の実景として続くことを祈りたく思います。
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バヤンがおしよせてきたのを見た皇帝は周章狼狽し、重臣とともに一千艘の船に乗って大海の中の島にのがれた。皇后はキンサイに残り、勇敢に全力をあげて防衛につとめた。
この頃、皇后は敵の司令官の名がバヤン(百眼)だということをはじめて知った。彼女はさきに天文家が、百の眼をもった人がこの国を奪うだろうと予言したことを思いだし、敵対しても無駄だとさとり、バヤンに降伏し、全領土を引き渡した。引渡しにあたって、何らの抵抗もなく、全くすばらしい征服だった。(中略)
キンサイの市民は平和を好んでいるが、これはそのような教育をうけているためでもあるし、皇帝がその模範をしめしたからでもある。彼らは武器を所蔵してもいないし、使い方も知らない。彼らの間にはいかなる不和、反目、口論さえおこらない。商取引においても、品物の製造においても、彼らは実に正直で、信用できるし、男女も善意にみち、人づきあいもよいので、同じ町内にすむ人々は一家族のように見える。
家庭内では、彼らは大いに妻を尊敬し、決して嫉妬したり、疑ったりしない。既婚の婦人に下品な言葉を使ったものは、野卑な人物と見なされる。外国人が商用でくると、愛想よく親切にとりあつかい、いろいろ援助もするし、助言もする。しかし兵士は、これを見るのも嫌い、大ハーンの守備兵を見ても、自分らの皇帝や貴族を奪った元凶だと考えている。
- マルコ・ポーロ著 青木富太郎訳 「東方見聞録 全マンジの首都キンサイ」社会思想社 現代教養文庫 -
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