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「直接輸出 対 間接輸出」商社機能の活用を見直す

国際貿易の学問的研究の世界では、「貿易論」と呼ばれる研究分野があります。
「貿易論」では商社の果たす役割=間接輸出への研究が急速に進んでいます。
日本の貿易構造を「直接輸出 対 間接輸出」に分けて論じられている点に注目です。

商社経由の間接輸出は、日本の貿易構造の大きな特徴でした。
特に為替管理が行われていた1970年代は商社経由だけと言っても過言ではないでしょう。
商社が輸出メーカーに対してのファイナンス機能も果たしていたからです。
「商社」の果たしてきた役割が重要と指摘されている所以です。

その後、商社無用論が論じられた時もありました。
経済自由化が進むに従って、誰でも商社に頼らないでも輸出できる時代です。

海外展開をするには、先行投資が必要となります。
取引先の開拓や物流構築などのビジネスモデル作りをしなければなりません。
こうした費用負担ができる生産性の高い企業は自力で直接輸出することができるでしょう。

しかし、自分で生産した製品を自分自身で輸出できない場合はどうでしょうか。
商社のインフラを利用した間接輸出を行うことになるでしょう。

企業の生産性といった視点だけでなく、その他の商社機能も活用すべきでしょう。
輸出が容易な国には自力で直接輸出できる企業も、輸出が困難な国には商社を通じて間接輸出を行うことも一案でしょう。

最近は誰でも自力で海外展開を考えられる時代になりました。
商社機能の活用という観点から「直接輸出 対 間接輸出」を考えてみてはどうでしょうか。

関連コラム:
海外展開・よくあるご相談 2012/09/24

2014/01/20

日本にはたくさんの「お宝商材」が埋もれている! 

TPP交渉でアメリカから日本市場開放への圧力が強まるのではないかといったマスコミの論調もありますが、アメリカが日本の産業活性化に注目している動きもあります。

マサチューセッツ工科大学(MIT)/スタンフォード・ベンチャー・ラボのアドバイザーも務めているポール・チン博士から、Re-Vitalize & Monetize the Old Businessというタイトルのプレゼンを伺う機会に恵まれました。

海外展開への動きが活発化しているが、取り組み方を変えようと力説されています。

・米国市場から見て、日本にはたくさんの強みがある。
・でも、多くの商材が埋もれている。
・日本の強みを活かした相乗効果で、新しいビジネスチャンスが作れる。

米国式ベンチャー育成の考え方で、日本の中小企業の持っている埋もれた商材を発掘して、新しいビジネスを創造して活性化につなげたいという趣旨です。

そのために、今までの各企業単位での取り組みではなく、中小企業のチームとしての取り組みを提案しています。

米国大使館もこの提唱に期待しており、今後の活動に期待したい。
とかく中国・ASEANへ目が向けられがちの海外展開だが、米国市場の懐の深さを再認識すべき時期なのではないだろうか。

2013/04/08

2050年の世界・・・ 

今年4月、日経連・21世紀政策研究所が発表した2050年の世界・・・
(グローバルJAPAN報告から一部を抜粋)

・アジアが世界のGDPの半分を占める
・ヒト・モノ・カネがもっと自由に国境を超える時代になる

そのために、
・ITをいかに使いこなせるかが経済成長のカギになる

グローバル展開するためには、
・「英語」「IT」だけでなく、幅広い教養を持った人材が必要になる
・グローバル人材育成のための教育制度の見直しも必要になるだろう

2012/11/19

海外展開・よくあるご相談 

海外展開を考えている経営者からよくあるご相談・・・
「海外展開をしたい。でも、どこから手をつけていいかわからない」
このようなご相談もよくあります・・・「まず、展示会に出展して可能性を探ってみたいが、どうか?」

よくあるパターンですが、経営判断する材料を洗い出す「初期調査」からはじめることが、先決であることを申し上げたいと思います。

ターゲットとする市場規模・ニーズなどだけでなく、輸入規制などの初期調査から始めましょう。
ざっくりでいいですが、自分の商品をターゲットとする市場に持ち込んで、「競争力があるか?」。
このざっくり試算をすることも、初期調査段階で経営判断すべきことだと思います。

ある程度可能性がありそうであれば、次のステップへ。
分析作業・ビジネスモデル作り・戦略を検討することになります。

販売戦略を検討する段階で、海外へ販売する場合の取引条件を煮詰めておくことも大事でしょう。
相手から「この条件で買いたい」と条件を提示されると、概して、自分に都合のよい条件ばかり、といったケースが多いものです。

そのようなことがないように、「売主としての取引リスクを少なくする準備」=自分に有利な条件を提示して、それから交渉するといった「先手、先手の販売戦略」(イニシアティブを持った販売戦略)が大事なのでは無いのではないでしょうか。

2012/09/24

オフショアリング(海外移転) 

ジャーナリスト・池上彰氏が「先送りできない日本」(角川Oneテーマ21)の中で、トーマス・フリードマンの言葉を引用して、「2001年に中国がWTOに加盟してから、世界の貿易の流れが変わってきた」と指摘していますので、ご紹介したいと思います。

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トーマス・フリードマン著「フラット化する世界」 より

アフリカで毎朝、シマウマが目を覚ます。
一番足の速いライオンよりも速く走らないと殺されることを、シマウマは知っている。

毎朝、ライオンが目を覚ます。
一番足の遅いシマウマに追いつけないと飢え死にすることを、ライオンは知っている。

ライオンであろうとシマウマであろうと変わりはない。
日が昇ったら、走りはじめたほうがいい。

誰がライオンで誰がシマウマなのか。
私にはわからないが、これだけはわかっている。

中国がWTOに加盟して以来、その両者と世界各国は、どんどん速く走らなければならなくなっている。
中国のWTO加盟が、共同作業の別の形-オフショアリングを強烈に加速させたからだ。
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大地震以来「海外移転・空洞化」とのマスコミ論調が多い中、2001年の中国のWTO加盟から流れが、オフショアリング(海外移転)に向かっているとの指摘に鋭いものを感じました。

2012/09/13

中小企業のグローバル展開 

「東京の市場は量・質において、国際的にも恵まれた環境にある」
東京商工会議所が「東京の特性を踏まえた中小企業の成長のあり方」を提言している。

「変化に対応する」、「強みを作る」など中小企業が成長戦略を策定する際に必要となる視点をまとめている。その中から「グローバル化」について紹介してみたい。

海外進出した多くの企業が「国内市場に危機感を抱いた」ことを進出動機に挙げている。
多くの業界が「国内市場の縮小」という問題に直面しており、これを打破するために、既存の技術を活用して、「海外」という新市場に出て行く戦略を選んでいる。

一方、海外から撤退している企業もいる。
撤退しているのは、大企業に比べ、中小企業の比率が高い。海外に進出しても、「受注先・販売先の開拓が困難」「生産・品質確保が困難」「生産コストがアップ」などの問題に直面したケースが多く、事前調査を充分に行ってリスク分析などを行ってから経営判断をすべきと注意を喚起している。

「グローバル化」についての成功事例がいくつも紹介されているが、海外に直接進出せずに、グローバルにビジネス展開をするソフトウエア開発会社のケースが興味を引いた。

人材採用でグローバルにビジネス展開をするソフトウエア開発会社のケース
「日本人の頭脳だけでは勝てない」という考えのもと、いかにして国籍を問わず優秀な人材を確保・活用するかという課題意識を持ち、海外に進出せずに東京本社をグローバル化している。
現在、6カ国18名の外国人が働いており、本社社員の20%弱を占めている。
入社3年目で部長となる中国人社員もでてきているそうだ。

「海外」という新市場に出て行く戦略だけが、「グローバル化」への道ではないよき事例として紹介したい。

2012/09/03

海外進出のよき事例

日経新聞「私の履歴書」、キッコーマン名誉会長 茂木友三郎氏の連載が始まりました。

今から55年も前の1957年に初の海外進出。
サンフランシスコに最初の販売拠点、その後、中西部・東海岸へ。

いまやMade in USAのキッコーマンですが、進出当初から、「現地生産しなければ本当の国際化はないの信念をもっていた」で連載がスタートしました。

一気に直接進出でなく、ステップ・バイ・ステップの「海外進出」対応など大先輩たちの信念と努力が大いに参考になることでしょう。今後の連載を期待しています。

2012/07/05

自動車部品工場中国進出の事例

先日のNHK特集で報道された海外進出の事例をご紹介したいと思います。
紹介された事例は、自動車部品製造の町工場が集団で中国へ。

メッキ・プレス・切削のプロが集団でニッポンブランド(技術力)を強みに進出。
日本から製造設備を持ち込み、日本と同等の品質を提供するビジネスモデル。

ところが、期待した受注がなく、工場稼動がうまくいかない。
品質にこだわる日本式とコスト重点のローカルメーカーとの戦略の違いがあった。

マーケットニーズに沿ったビジネス戦略がいかに重要か、考えさせられます。

2012/05/25

最悪のシナリオの準備も大事

海外展開のよい面ばかり報道されている傾向がありますが、撤退という最悪のケースもかなりあるといわざるを得ません。

初めての海外進出がうまく行くことは少ないとの前提で、覚悟を決めた海外進出の準備が必要です。進出前の検討段階から、最悪のシナリオも考えておくことをお勧めします。

いつまでに経営目標を達成しない場合には、潔く撤退を決断することも経営判断としては重要な点でしょう。

とかく、あるべき姿のシナリオを追い求めがちですが、逃げ遅れないように、再挑戦するなどの経営判断が必要でしょう。
最悪のシナリオを準備しなかったため、帰るに帰れなくなったケースとならないようにしましょう。

2012/04/20

中小企業の海外展開へのサポーター

「大企業についていくだけでなく、独自に思い切った海外展開をしないと」、日本商工会議所・岡本正会頭のインタビュー記事が紹介されている。

中小企業が独自に思い切った海外展開するための課題は?の問いに対し、「海外ビジネスをためらっている時間はない。進めなければ、世界経済の流れから振り落とされてしまう」と危機感を募らせている。

最近は、商工会議所が主催する海外視察団への応募が盛況で、「海外市場を開拓したいという気持ちの高まりを感じる」とのコメントもあるが、なお一層、「大企業についていく海外展開だけでなく、自らが海外展開を行う」必要性を強調している。

東京商工会議所では、海外展開を目指す中小企業の相談に応じている。
中小企業相談センター(東京都千代田区丸の内3-2-2 TEL:03-3283-7700)

関連コラム:
「海外ビジネスガイドブック」 2011/11/28

2012/03/21

海外展開B・Cパターンでのトラブルと解決策

Aパターンよりも一歩進んで、現地で海外パートナーと事業展開をするBパターン・Cパターンでのトラブル事例をご紹介しましょう。

Bパターン(海外へ間接的に進出をするケース)でのトラブル事例

海外パートナーに販売委託する場合のトラブル事例:
・販売トラブル:代理店が販促活動を積極的に行わない、結果として売り上げが伸び悩むなど
・知財トラブル:ブランド保護を行わないだけでなく、無断登録をするなど
・契約条項違反トラブル:安値での販売、横流し販売、テリトリー外での販売など

海外企業への生産委託・技術委託する場合のトラブル事例:
・秘密保持条項違反トラブル:生産技術情報を無断で転用するなど
・委託条項違反トラブル:生産開始の遅れなど
・委託条件トラブル:生産委託料の増額要求を受けるなど

Cパターン(海外へ直接的に進出をするケース)でのトラブル事例

海外に自社支店・工場を設立する場合のトラブル事例:
・進出準備トラブル:現地当局への許認可申請がうまくいかないなど
・労務トラブル:従業員の労務問題など
・調達トラブル:輸入関税の追加徴収など

現地パートナーと合弁事業をする場合のトラブル事例:
・進出準備トラブル:現地アドバイザーから過度な報酬の要求を受けるなど
・税法上トラブル:事業拡大で追加資金投入ができないなど
・想定外のトラブル:事業縮小・撤退への制約が多いなど

Bパターン・Cパターンでは、書面にした契約書が、なお一層重要な解決策となります。
相手はこう思っているだろうと勝手に判断することなく、お互いによく話し合って、合意した内容を書面にしておくことが大事です。

2012/03/07

よいパートナーを見つけたい

自ら海外に進出せず、海外パートナーに販売委託、または、生産委託する方法があります。

「初めて海外進出を検討しているが、よいパートナーを見つけたい」
多くの経営者から受ける質問です。

間接的な進出だからリスクが少ないとは限りません。
よくあるトラブル事例をご紹介しましょう。

・輸入販売代理契約をしたが、売り上げが低迷している、よく調べると怪しげな販売ルートでダンピング販売をしている。
・商標を無断で登録されてしまった。
・生産委託契約をしたが、予定通り生産が始まらない、委託料の増額を要求された。
・相手先に開示した生産ノウハウを無断で使用された、類似品が出回ってわかった。

後から、「こんなはずではない」とならないようにしましょう。
契約交渉で、お互いのやるべきこと、やってはいけないことなど、事細かに話し合いましょう。

相手はこう思っているだろうと憶測したり、勝手に推測したりせず、話し合いで合意した内容を明確にした契約書を取り交わしておくことが大事です。

2012/2/29

海外展開Aパターンでのトラブルと解決策

海外展開や輸出入取引をおこなったときに生じやすいトラブルがあります。

製品を海外で販売する場合のトラブル事例
・代金を払ってもらえない、支払いが遅れるなど、回収トラブル
・顧客都合で、一方的にキャンセルを受けるなど、受注トラブル
・品質クレームを受けるなど、品質トラブル 

部品・原材料などを海外から調達をする場合のトラブル事例
・仕入先都合での生産遅れなど、貨物受渡しトラブル
・到着貨物数量が発注数量と異なるなど、数量差異トラブル
・受注確定後の一方的な価格変更要求を受けるなど、発注条件トラブル

さまざまなトラブルがありますが、大きく分けると、
1)品質不良に関するもの
2)数量不足・商品受け渡しに関するもの
3)マーケットクレームに関するもの
になると考えられます。

契約時に価格と納期だけを取り決め、その他の条件を明確にしないで契約してしまうケースが多く見られます。
輸出入取引の契約では、売買当事者の責任範囲と免責範囲について、細かく取り決めておくとともに、最悪を想定した場合のクレーム解決方法も合意しておくことが大事です。

1)品質不良に関するトラブル解決策:

輸入取引を開始する前に、相手側に品質要件を十分に理解してもらうことが大事で、製造時の品質管理や出荷検品の管理方法などの話し合いや、輸出者の責任範囲の明確化がポイントです。
併せて、クレームが発生した場合の対応で、さらには円満解決できない場合を想定し、契約書にはクレーム条項と仲裁条項を明記しておくことも必要です。

2)数量不足・商品受け渡しに関するトラブル解決策:

輸出入の慣習で、契約数量の5%は許容範囲内とする考え方もあり、数量不足は特に注意すべきです。
もし、許容できる増減幅を設定する取引の場合、契約段階でその数値を明確にしておく必要があります。
輸出の場合、インボイス数量との差異を理由に、着荷不足のクレームを受けるケースも多発しています。輸出者自らが輸出時の検数・検量を行うことが必要でしょう。

3)マーケットクレームに関するトラブル解決策:

輸出者の小さなミスを契約不履行という理由でクレームにされたり、値引きを要求されるケースがあります。
船舶や航空機のスケジュール遅延は輸出者に直接の責任ではありませんが、納期遅延を理由に値引きを要求されたケースもあります。契約時に売買当事者の責任範囲と免責範囲を明確にしておくことが必須となります。

「当事者の利害は反する」、そのために、3ポイントをたえずチェックしましょう。

・当事者の責任範囲と免責範囲を明確にする
・最悪を想定した契約管理を行なう
・自らクレームリスクを招かないようにする

2012/02/24

3パターンの海外展開

グローバル化の時代です。多くの企業が海外と関連があり、ますます海外展開をめざそうとする企業が多くなるものと思われます。

でも、「海外展開」と言っても漠然としていて、理解しづらいと思います。
「貿易とは何か?」から考えて見ましょう。

貿易とは、当たり前ですが、国内取引ではなく、異なる国の間で行われる売買取引です。当然、言葉が異なるため、話が伝わりにくい。さらに、文化・社会通念が違うため、お互いの理解や認識に大きなずれが起こりやすい。また、売買当事者それぞれで商慣習・法制度が異なる。

そのために、国内取引と比較すると、より多くのリスクがあります。国内取引でもそうですが、売主と買主の利害は反しています。ですから、当事者間のトラブルはつきものなのです。

このような環境で国際取引をすることになりますが、具体的にどのような海外展開があり、それぞれにどのようなトラブル事例があるか考えてみましょう。

Aパターン: 海外と取引契約をするケース(一般的な輸出入契約)
製品を海外で販売する、部品・原材料などを海外から調達をするなど

Bパターン: 海外へ間接的に進出をするケース
海外パートナーに販売委託する(現地代理店)、海外企業への生産委託・技術供与するなど

Cパターン: 海外へ直接的に進出をするケース
海外に自社支店・工場を設立する、現地パートナーと合弁事業をするなど

海外展開というと、BパターンまたはCパターンだけと考えがちです。Aパターン(一般的な輸出入契約)も、国境を挟んだ取引であることには変わりなく、海外展開の1パターンとして含めました。

2012/02/14