Terve! フィンランドのスタートアップ企業の今
フィンランドのゲーム「アングリバード」のRovio社や「クラッシュ・オブ・クラン」のSupercell社、最近ではフード・デリバリーのWolts社をはじめとするスタートアップ企業の成功は、フィンランド経済と起業家精神を刷新してきました。またスタートアップイベント「Slush」も2018年には東京でも開催され、世界の起業家たちの間では常に注目のイベントとされています。
コロナ禍やウクライナ侵攻によりこのスタートアップ業界にも大きな影響を及ぼしています。今回はそんなフィンランドのスタートアップ業界の今をお届けいたします。
フィンランドのスタートアップ起業は、革新的な現象とみなされているようですが、そのルーツは1990年代に遡ります。当時は、急成長するテクノロジーに関心のある人々を集めたデモシーンという位置付けぐらいだったものが、建築やデザインで有名なアアルト大学の学生の運営による非営利団体のスタートアップコミュニティが誕生。今では経済成長を生み出す革新的で高いスキルを持った活動とみなされ、イノベーションによって経済成長を生み出すという考え方の一つにまでなっています。
この成長の影には、老舗企業ノキア社の崩壊後のフィンランド経済に新しい方向性として、このスタートアップ起業が提示されたことにあります。
その提示により企業家精神として情熱と自己実現、そしてチームワークを鼓舞することが定着してきました。
現在フィンランド・スタートアップ・コミュニティ(FSC)団体が立ち上がり、100以上のさまざまな段階の異業種が集まって活動をしています。
最近このFSCによる初のスタートアップ・バロメーターが実施されました。四半期ごとに、スタートアップエコシステムで活動する企業や投資家が、自社や周囲の経済状況についてどのような見解を持っているかをマッピングしました。
バロメーターによると、スタートアップ企業は自らの成長の可能性に強い信頼を寄せているとの回答が多くみられました。しかし、周囲の経済状況については同様の信頼を見出すことはできないとの回答も多くみられました。ロシアによって引き起こされた周辺国としての治安悪化の懸念も、企業にとっては大きな懸念材料です。
回答したスタートアップ企業は、ここ数年で大幅に人員を増やしている傾向がみられる一方、なかなか適切な人材が確保できない状況であることも明らかになりました。
その半数以上は、熟練労働者の不足が事業成長の最大の障壁であると回答しています。「市場における熟練・専門家の競争は激しく、彼らを惹きつけるには、さまざまな手段に基づいて行わなければならない」とSupermetrics社のCEOであるThuneberg氏は話しています。
そして先月にはFSC主導の新しい目標を発表しました。この目標は、フィンランドの成長企業をはじめ、アーリーステージ(初段階)のスタートアップ企業を含む、コミュニティ内の約130社のメンバー企業から生まれました。
「私たちの最大の目標は、フィンランドを最高の人材が集まる世界一の場所にすること、そしてフィンランドがスタートアップ企業を立ち上げ成長させて、フィンランド経済を支える新しい中心的な存在に成長し、雇用と税収をもたらすことを目指しています」とFSCのCEOであるPakarinen氏は述べています。
目標の具体的な中身は、コンピテンスと研究開発、気候変動やヘルスケアへの技術による課題解決、プラットフォーム・エコノミーやブロックチェーンなどの法規制、税制上の優遇措置などありとあらゆる方面の目標が掲げられました。「2030年までに、フィンランドのスタートアップや成長企業が、輸出やGDPとの関係においても、森林や金属産業などの基幹産業と並ぶ国の新しい経済の柱となり、フィンランドの最重要な経済部門の一つになると考えています」とFSCの理事長であるAhopelto氏も述べていました。
世界中の経済や秩序がガラリと変わり始めた2022年。間もなくその半分が過ぎようとしています。
ウクライナ侵攻によって歴史的転換であるNATO加盟に至った小国家フィンランド。この国の生き残りをかけた経済構造の変化の一つに、スタートアップ業界が引き続き一躍を担うことは間違いなさそうです。
写真出典元:
https://businesstampere.com/tamperes-startup-community-the-power-of-input-and-output/
2022/06/05