国際物流を自然界の知恵を借りて考えると、国際物流企業のサービスレベル(サプライチェーン)も「最適」から「準最適で良し」との考え方に納得できます。貿易実務の情報サイトらくらく貿易。|国際物流と自然界の知恵を借りて考えてみる

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国際物流を考える、自然界の知恵をもっと学ぼう

「国際物流」をテーマにしたワークショップの準備で、以前らくらく貿易にアップしたコラムを読み返してみました。
ロジスティクス人財フォーラムで大いに感銘をうけた「準最適」のコラムです。

このコラムに登場する東大の西成教授が2年ほど前にも同じようなシンポジウムに登場していることを想い出し古い資料を引っ張り出してみました。

国際物流に携わる業界代表と生物学者とが「自然界の知恵をもっと学ぼう」という趣旨で意見交換をしたシンポジウム資料です。
環境が変化する自然界の中で動植物はどのように生き残っているかが紹介されています。

環境の変化に柔軟に対応している自然界の知恵に注目してみると最適物流への解決策がありそうです。

■動植物はどのように環境に適用しているのか?
渋滞学を研究している西成教授は、蟻(アリ)の知恵を紹介しています

あれだけたくさんで移動しているのに「渋滞」をしない。
アリは自律分散的に移動しますが、全体的な秩序が作られています。

フェロモンを出しながら移動するためお互いがぶつからない、だから渋滞をしないとか。
GPS機能のようにアリは周辺情報を知ることで全体がわかるようです。

ブナの木を研究している生物学者も自然界の知恵を紹介しています。

ブナの木は翌年の開花量をコントロールできる。
花を咲かせるか葉っぱになるかを決めるのは、前の年。
自然環境に合わせて咲かせる花の量を決める制御力をもっているそうです。

環境が変わる中でどのように制御できるのでしょうか。
自然界の変化を受け入れられるように一定の無駄を繰り返しているためだそうです。長い目では無駄ではないのでしょう。
このようなさじ加減というか試行錯誤の連続で自然環境に合わせているのでしょう。

■自然界から学ぶ国際物流のコツ
国際物流企業のサービスレベル(サプライチェーン)を考えるうえで「準最適をよしとすべき」との意見があります。

シンポジウムに参加している物流業界代表からの意見です。
・最適物流をめざしてやってきた結果、準最適な姿に近づいていくのではないか。
・「ゆるいモデル」でいいのではないか。

「最適物流とはなにか?」をつきつめると、「より安く・より早く・より安全に」になると思います。しかし、すべてを満たす最適物流なんて、この世にないと思います。
その意味でも、最適でなく、準最適の考えが貴重なのだと思います。

準最適な国際物流を考えるうえで自然界の知恵が大いに示唆に富んでいるのではないでしょうか。

関連記事:「物流経費率」を知ることで経営課題が見えてくる

2014/10/28

国際サプライチェーンは「準最適」が良い

国際ロジスティックスに関して大変に興味あるフォーラムがありました。
「第5回ロジスティクス人財フォーラム」(イー・ビジネス・ドットコム有限会社主催、2014/06/14)

基調講演をされた東京大学先端科学技術研究センター西成教授の「準最適」に考えさせられました。

■サプライチェーンの「準最適」とは?
物流業界や商社ではサプライチェーンの「最適化」という言葉をよく使っています。

それだけに「準最適」という言葉が新鮮に聞こえました。
「準最適」とは、そこそこの効率性、つまり長期的に見て最適という意味とのこと。

■「準最適」なサプライチェーン
自然界は自然に逆らわず適合する知恵を持っており、サプライチェーンを考えるときにもこの自然界の原則に学ぼうとの考え方です。

経済>資源・エネルギー>環境、すべてを満足させる最適サプライチェーンを求めるのではなく、ソフト・ハード・人的要因をミックスして自然なバランスを保つことができるのが「サプライチェーンの準最適」とのこと。

言われればそのとおりですね。
国際的なビジネス環境は日々刻々と変化・進化しています。最適なサプライチェーンといってもそれは一瞬のこととして過ぎ去ってしまうかもしれません。
サプライチェーンを提供する側も利用する側も長期的な視点に立ち、「準最適」=そこそこに効率的な物流を考えるようにしたらどうでしょうか。

関連記事:
「全体最適な物流」とは何でしょうか?

2014/06/20

「物流経費率」を知ることで経営課題が見えてくる

「モノを安く・早く運びたい」 - 輸出入取引での経営課題ですね。
変動している物流費をチェックし直すことは必要でしょう。
でも、ちょっと見方を変えてみませんか?

あまり聞きなれない言葉ですが、「物流経費率」を試算してみましょう。
輸出地経費+国際物流経費+輸入地経費(総物流費)÷商品コスト(EXW)

たとえば、
輸出地経費・・・¥25,000-
国際物流経費・・・¥50,000-
輸入地経費・・・¥25,000-
(総物流費)合計:¥100,000-に対して、
商品コスト(EXW)¥500,000-の場合、物流経費率=20%となります。

事業の粗利率をどれくらいに設定していますか?
粗利率30%程度とすると、20%もの物流費では採算が全く合いませんね。
一般的な販管費を15%程度とすると赤字になってしまいます。

このケース、物流コスト見直しの前に商品コストの見直しをすべきでしょう。
もっと高額な商品を検討したほうがいいのかもしれません。
あるいは、仕入先ロケーションがビジネスモデルに向いていないのかもしれません。

このように「物流経費率」を知ることで経営課題が見えてくるのではないでしょうか。
通常、物流経費率を10%以下にすることが望ましいと考えられています。

2013/08/05

関連サイト:
最適物流へのポイント 2010/12/27

「全体最適な物流」とは何でしょうか?

「強い経済の再生と成長を支える物流システムの構築」
最近、閣議決定された総合物流施策(2013年~2017年)のタイトルです。
アジア全体の物流の質を高めて、アジアの経済成長に貢献する方針が示されています。

海上輸送・航空輸送ともにハブ機能が中国・韓国に移動してしまっていることを考えると、遅ればせですが目指している方向性としては大歓迎だと思います。

この大綱にはこのような副題もついています。
~国内外でムリ・ムダ・ムラのない全体最適な物流の実現~

「全体最適な物流」とは何でしょうか?
物流業界ではよく使われる言葉ですが、いまひとつわかりづらいですね。
具体的にはどのような物流を意味しているのでしょうか?

「This is the best」といった物流はなく、商品ごとにさまざまな物流方法があると思います。
当然、物流効率とコストの観点は大事です。
さらに、サプライチェイン全体の運用方法も含めたさまざまな工夫も必要だと思います。

動植物などが環境の変化を敏感に読み取り、将来を見越しBetterな選択をしています。
物流構築についても同じように「先を読む力(さまざまな工夫)」が必要なのだと思います。

自分にあった物流を作っていくことが「全体最適な物流」なのだと思います。

関連サイト:
最適物流へのポイント 2010/12/27

2013/07/23

日本海ゲートウエイ 

先週の東京ビッグサイト・国際物流総合展2012でのこと。
「日本海拠点都市・新潟」のブースで、サプライチェインを再認識しました。

東日本大震災以来、サプライチェインとして重要性を増してきている日本海沿岸の港湾。
特に後背地への高速道路網が完備されており、緊急災害時だけでなく、アジア・中国・ロシアへの物流ゲートウェイとしても注目されている。

その中でも、新潟港は、従来から、LNG燃料輸入の拠点として重要港湾であったが、コンテナ取扱量が、他の日本海沿岸の港湾と比べて、断トツ(3倍以上)に増えてきている点に注目したい。

2008年以来、韓国・釜山港と定期配船を始めてから、特に顕著とのこと。
世界トップ5にランクされる釜山港は、アジア・中国だけでなく、欧州への物流ルートの拠点にもなっている。
新潟港からは、ロシア・ザルビノ港経由で中国東北部へのルートもある。

日本起点のハブ港が少なくなっている現状を見ると、新潟港を利用した海上輸送ルートが、コスト削減・リードタイム短縮の検討対象となるケースが多いのではないだろうか。

2012/09/18

海外進出と国際サプライチェイン 

「日本企業にいま大切なこと」(野中郁次郎、遠藤功著、PHP新書)
経営のプロが海外に売り込める日本の価値観を語り合っている。

日本の「当たり前」が注目されている、「日本の強み」を自覚せよ、と。
ポイントは「日本の当たり前が世界での競争力」と説いている

海外進出でキーとなる国際サプライチェインを考える上でも、共通している点があるので取り上げてみた。

グローバル戦略で海外売り上げ比率を伸ばしているケースが多く紹介されている。
たとえば、まさに「日本の当たり前」、時間指定の宅配便サービス。
これは、世界のどこにもない。

国境を越える物流は、情報化である程度のトレースはできるようになっているが、まだまだこのような「日本の当たり前」、時間指定の宅配便サービスなど、皆無だ。

海外進出を考える上で、日本と世界の違いを、まずは知ることが先決だと思う。

2012/07/25

輸入物流経費を知ろう 

A地点からB地点までに掛かる経費項目は、3グループにわけることができます。

1.輸出地でかかる経費:
貨物ピックアップ料、ターミナル料、輸出申告料、輸出梱包費など

2.国際輸送の経費:
基本運賃、燃料割増料、為替調整割増料、セキュリティー割増料など

3.輸入地でかかる経費:
輸入通関料、貨物検査料、ターミナル料、配達運賃、輸入関税、輸入消費税など

この経費を輸出者が負担するか、輸入者が負担するかを取り決めているのが、世界共通の貿易条件(インコタームズ)です。最新版のインコタームズ2010では、この条件が11種類もありますが、ここでは、日本でよく使われるいくつかの条件について、経費の負担範囲がどう違うかみてみましょう。

EXW条件 (Ex Works、工場渡し)
工場を出荷した時点で、売主から買主にモノの引渡しが行われた以降、買主は、輸入地までのすべての費用負担(つまり、経費項目1+2+3)をして、物流手配も行わなければなりません。

FOB条件 (Free on Board:本船渡し)
FOBの場合、モノが船に積み込まれた時点で、売主の引渡しが完了します。この場合、売主は、経費項目1(輸出地でかかる経費)を負担し、買主は、経費項目2+3(国際輸送の経費と輸入地でかかる経費)を負担することになります。

CFR・CIF条件 (Cost and Freight:運賃込み)
日本到着までの全ての経費項目(1+2+3)を売主が負担する条件で、保険を付けない場合がCFR条件であり、保険込みの場合がCIF条件となります。

この条件は、買うほうにとって、物流手配をしないため、便利に思われがちです。しかし、売主に丸投げするのと同じで、日本到着まで輸出地費用、国際運賃が妥当なレベルであるかどうかの検証をする必要があります。

初めて輸入取引される方にとっては、売主に物流手配を一任するCFR条件かCIF条件で始めて、慣れてきた段階で、自分で全ての物流手配をするEXW条件に切り替えるのも一案かと思います。

関連サイト:
インコタームズ2010(その1) 2010/10/6
インコタームズ2010(その2) 2010/12/8

2012/03/02

効率的な国際物流の3つのポイント(輸入編)

効率的な国際物流を行うためには、以下の3つのステップで進めてみるのが良いでしょう。

ステップ 1: 貿易コンプライアンスと関税率の調査からはじめましょう

日本の輸入取引は、原則自由です。しかし、事前の許可・承認が必要とされる商品があります。そのため、まず、輸入取引での法規制の調査(貿易コンプライアンス)から始めます。また、環境保護で規制されている商品もあります。
同時に、輸入で掛かる総コストを算出しておくために、関税がいくらかかるのかも事前に調べておきます。

ステップ 2: 国際運賃部分だけでなく、輸入総コストを数値化しましょう

どのような物流が効率的かどうかを判断するのは、国際運賃部分だけでは判断できません。ステップ1の関税調査に引き続き、A地点からB地点までに掛かるすべてのコストを数値化することが必要です。
輸出地で掛かる経費+国際運賃+保険料+輸入地で掛かる経費+関税のようにすれば、総コストを知ることができます。

為替レートのように変動要因のある項目については、現時点の実勢レートより5%アップで試算したり、見積書に「検査費用、実費」と記載されている場合は検査をする場合の想定値で試算する等、全ての経費項目を数値化して、トータルコストをわかるようにして、比較検討すればどのパターンが効率的なすぐに判断できるでしょう。

総輸入コストを試算しておくことで、輸入時に必要な資金がいくら必要になるかもわかります。輸入経費の支払いは、貨物引渡しと同時に行うのが一般的ですので、資金繰りの上でも大事です。

ステップ3: 商品情報を早めに入手しておきましょう

輸出者からの発送案内の連絡を受けたら、通関手続きに必要とされる書類の提供を必ず依頼してください。国際宅配便や航空貨物の場合、貨物と一緒に書類が届きますが、事前に輸出者から必要書類を入手していれば、輸入通関手続きで手間取ることがありません。

さらに、輸入商品のカタログ情報や前回輸入通関時の実績書類を提示すると、通関手続きを早くに行うことができます。このような情報がない場合、貨物検査の対象になる確率も高く、その検査費用が経費アップとなるだけでなく、時間もかかることにもなります。

関連サイト:
ココム規制とワッセナーアレンジメント2012/01/19
効率的な国際物流の3つのポイント 2012/2/14

2012/2/27

効率的な国際物流の3つのポイント

「モノを効率的に運ぶ」、いかに早くに、安全に、しかも経済的に運ぶか、頭を悩ます課題ですね。
物流業者にどのような輸送形態が効率的か相談したり、見積り依頼をする前に、どのような貨物を、どこからどこへ、いつまでに届けたいか、要件を整理しておきましょう。そのための3つのポイントです。

ポイント 1: 契約している取引条件を確認しておきましょう

それぞれの取引条件ごとに、売主と買主の費用負担範囲が決められています。たとえば、EXW条件と、FOB条件の場合は、輸入者がすべての物流手配をすることになります。一方、、CFR条件の場合は、輸出者が物流手配をしますので、輸入者が輸入通関以降の手配をすればよいことになります。
契約している取引条件によって、自分が手配すべき範囲(見積もりの必要要件)が明確になります。

ポイント 2: 納期指定日を明確にしましょう

一般に、緊急を要しない場合は、海上輸送でよいのですが、納期を急ぐ場合は、時間的な制約から、一般の航空貨物輸送でなく、国際宅配便の利用を検討することもあると思います。さらに、超緊急の場合には、“ハンドキャリー”の利用も検討しなければならないかもしれません。
相手先にいつまでに届けたいかは、見積もりの必要要件として大事です。

ポイント 3: 貨物の重量と大きさを確認しておきましょう

国際輸送では、実際の重量か容積重量か、いずれか大きい方が運賃計算上の重量となります。これも、見積もりの必要要件として重要な要件となります。
航空輸送でも、海上輸送でも、運べるスペースは一定なので、嵩張って軽い商品と小型で重い商品との不公平感を無くすために、梱包の縦x横x高さの容積を計算して、、容積重量と実重量との比較で、運賃が計算されるためです。

輸送運賃の計算方法:
容積重量1キロは6,000立方センチですので、1メーター四方の箱の場合、100×100×100÷6,000 = 167キロとなります。実重量が167キロ以下の場合、この容積重量で運賃計算がされます。
(容積重量1キロ=5,000立方センチ=200kg計算を適用する場合もあります)

関連サイト:
インコタームズ2010(その1) 2010/10/6
インコタームズ2010(その2) 2010/12/8
効率的な国際物流の3ポイント(輸入編) 2012-02-27

2012/2/14