逆石油ショックは貿易取引にプラスかマイナスか?
原油安がすすんでいる。
3か月前1バレル$100台だった原油価格があっという間に半額に近づいている。
原油相場の下落は世界経済にとってプラスのはずだが、
ロシア・ルーブル安
株価の乱高下
に連鎖し「逆石油ショック」の再来すら危惧されはじめている。
■オイルショックと貿易取引の因果関係
最近はほとんど聞かれなくなったOPEC。
1970年代に一気に急騰した原油価格は世界経済が大混乱をきたしました。
その時の主役がOPEC石油機構。現在の中近東の繁栄を築いた石油産油国機構のことです。
1970年代に2度も起きたいわゆる「オイルショック」。
ガソリン代の高騰はトラック運賃や国際輸送運賃を跳ね上げました。
石油化学分野だけに限らず、すべての製造業における製造コストも高騰し、買いダメに走る消費者の姿が見られるなど狂乱物価といわれた時代でした。
このオイルショック当時、貿易取引も原油相場に大きく左右されました。
・航空輸送も海上輸送も一方的な運賃値上げが日常化
・貨物の需要が増えれば運賃の安い貨物は積んでくれない
・輸送効率の悪い路線への配船はなくなる
国際運賃相場はたえず「需給バランス」で変動していますが、儲け優先主義を象徴するかのありさまでした。
■貿易取引に与える影響
リーマンショック後、右肩上がりと高止まりを維持してきた原油価格がここへきて急落。いわゆる「逆石油ショック」の影響を臭わせるような現象が起きはじめているようです。
貿易取引においてはいままでとは違う環境変化がおきるのでしょうか?
貨物を国際輸送する場合、燃料割増料が課金されています。
・航空貨物の場合、燃油割増料=Fuel Adjustment Factor
・海上輸送の場合、燃油割増料=Bunker Adjustment Factor
航空燃料と船舶燃料で英語表記が異なりますが、両方とも、燃油割増料のことです。
国際運賃は原油相場を基に毎月割増料の見直しが行われています。
たとえば国際宅配A社の場合
今年の10月までは原油相場1バレル$100台を反映して、20%程度の割増料が荷主様に請求されていました。11月からの急落で来年1月の
割増料は16.5%に下がります。
海外旅行ですっかり定着した「燃油サーチャージ」
航空運賃以外に必ず徴収される割増料、なかなか複雑で言われるがまま払わざるを得ない現状ですが、パッセンジャー用の「燃油サーチャージ」もほぼ半額になりつつあります。
原油安の影響が着実に現れ、燃油割増料が下がる傾向にあることは歓迎すべきことです。
国際運賃の設定では、航空輸送も海上輸送も共に基本運賃に割増料が加算されます。
割増料には、原油価格や為替の変動など予測不能な要因が含まれています。
基本運賃を極力据え置き、割増料という名目で全体の運賃を調整しているわけです。
逆石油ショックが火種となって基本運賃そのものの値上げにつながらないことを願っています。
用語:FAF (Fuel Adjustment Factor)またはFSC (Fuel Surcharge)
用語:BAF (Bunker Adjustment Factor)
2014/12/24