今回は昨今何かと話題の「SWIFT」(スイフト)についてです。外為の現場目線での「SWIFT」への思いを、その前史を含めて幾つかお話ししたいと思います。
本論に入る前に一点確認しておきたい点があります。皆さんは今回のロシアの銀行の「SWIFT」システムからの排除。この報道を聞いてどう思われますか。「SWIFT」から排除されると海外との資金決済が出来なくなる。多くの報道の論調がこうなっています。確かにこれは間違いではありません。が、少しはしょった形です。
実は「SWIFT」自身に資金決済機能はありません。あくまでも資金決済の銀行間通信を担っているだけです。つまり銀行は受信したSWIFT電文に従って、コルレス銀行やCHIPS(チップス)、預け金・預かり金を通じて決済します。その点を押さえた上で報道に接するようにして下さい。さて本題です。
1.TELEX(テレックス)の時代(「SWIFT」前史)
「SWIFT」以前の外為での通信手段は主にTELEX(テレックス)でした。(以下TLX.と略します)TLX.は今考えても使い勝手は良くありませんでした。本当に。送信相手に即つながる。即通信出来る。こうなってくれないのです。国によっては待時(たいじ)コールと呼ばれるシステムがありました。その国と通信したいときはKDD(今のKDDI)に通信申込をします。
その後一旦回線を切って相手国からの返事を待ちます。回線が通じた!との知らせが入ると、やおら通信の開始です。こんな待ち時間付なので、この方法は待時コールと呼ばれていました。(今渦中の大国の前身が代表的な待時コール先でした)またTLX.は通信時間が長くなると通話料がドンドンかさむので、出来るだけ短時間で済むような技術も要求されました。なので新システム(SWIFTのことです)の登場に思わず万歳でした。
2.「SWIFT」は安定的且つ早い
「SWIFT」は限られた参加者によるデータのやり取りのせいか、送受信に特段の問題や心配はありません。更にその送受信スピードは目を見張るものがあり、15分ぐらいで到着しているものもありTLX.時代と隔世の感があります。
3.「SWIFT」は相手のなりすましを気にしなくて良い
「SWIFT」にはSWIFTアドレスと呼ばれる端末番号があります。このアドレスは受信電文に必ず出てきますので、どこから来たものか一目瞭然です。「SWIFT」は限られた金融機関等しか参加できません。正体不明のなりすましは排除される仕組みとなっています。(但し現実にはハッキングされたこともあります)
4.「SWIFT」は簡単なフォームでやり取りできる
これも大きな進歩でした。TLX.では言語制限はないので、英語以外の言語も入ってきます。フランス語、スペイン語ぐらいは、何とかなるのですが、それ以外になるとお手上げです。先ず何語なのか?そこから始めて皆で大騒ぎです。SWIFTはフォーマットが英語で決まっているので、必要な事項(金額、日付、銀行名etc.)を入れるだけです。誰でも電文を簡単に解読できる優れものです。
5.「SWIFT」は自行のシステムとつながっている
受信データはそのまま自行のシステムに接続が可能です。例えば被仕向送金(海外からの送金)なら、マネロン上問題の無ければ入金手前の段階まで自動処理され、朝一番にスタンバイして担当者の出社を待ってくれてます。米国年金などはUSDから日本円に交換し入金まで済んでしまいます。これはものすごい進歩です。
如何でしょうか、このようにSWIFTは非常に有益なシステムです。今回の制裁はそれの利用制限ですから、絶大な効果があると言えます。以上今回はSWIFTついてでした。
追記
JT(日本たばこ産業)が、ロシア宛支払にSWIFT制限は影響しない。こういう報道がなされていました。恐らくこれは国内にあるロシア取引先の非居住者円預金に、日本円で支払をするものと推測します。これならばSWIFTは関係ありません。念のため申し添えます。
用語ページ:SWIFT
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/s131
2022/03/07