今回はこのタイトルです。パッと見てどう思われましたか?「FX(外国為替証拠金取引)で(業者)マージンなしを実現!」こう取られた人も多いと思います。確かにこれだと経済誌の特集になりそうです。しかし残念ながら今回はこの手のお話ではありません。(スイマセン)
あくまでも銀行での輸出入取引等のお話しです。さて本題です。
銀行の外為取引では円建、外貨対価、予約取引以外の取引では、必ず当日相場による通貨交換が発生します。つまり当日の相場で通貨交換のやりとりが発生するのです。正直このやり取りには悩ましい部分がありました。当日のレート動向を特に気にしないお客様であれば、
銀行がレートを提示してそれを使う事で問題なしです。が、そんな神様(銀行にとって)みたいなお客様はまずいません。
ある日いくつか外為取引を銀行に持込んだ。ところがそれぞれレートが微妙に違っていた。こうなったらどうでしょうか。なんとなく銀行に対して不信感が出てきませんか。実はこれ良くあることなのです。原因は銀行の仕切り方にあります。銀行は取扱金額で大口(USD100千以上)と小口(それ未満)に分けます。そして大口は市場実勢相場、一方小口は当日公表相場を適用します。
但し公表相場発表前なら大口でも当日の公表相場も適用出来ます。つまりやや面倒くさいものの理屈の裏付けは取れている状態です。また取扱金額と言っても単純に依頼書上の金額ではありません。当日のスポット決済金額を判断基準としています。この仕切りは決して銀行都合のご都合的なものではありません。
外為全体からから見れば十分納得できる部分なのですが、そこら辺を話せば話すほど言い訳じみて来るのも事実です。私も外為営業を始めた頃一生懸命この説明を始めてしまい、目の前のお客様を頭から湯気状態とさせてしまった事があります。(お客様は仕組みでは無く、なぜ相場が違ったかを聞きたかったのです。)
こういった状況への一つの解決策が、今回テーマの「マーケットレートでの外為取引」なのです。銀行に取って例外的な取扱になるのですが、かといってとんでもなく異例な取引ではありません。外為店ならば1・2社は存在しています。それぐらい普通でもあります。では具体的にはどう対応しているのでしょうか。
多くの場合銀行の事務処理は全てシステムサポートされています。つまり手続きに従えばオンラインが事故ミスを防いでくれます。マーケットレートを常に使うというのはこのサポートを受けない事です。であるのであれば本部に異例申請が必要となります。申請理由としては、当該のお客様が為替相場を良く理解している。大口の外為持込先である。他行取引防衛のため必要。等々でした。
要は銀行のロジックでは取引が難しい。こう結論づけるわけです。本部の方も心得てましてこの手の申請はまず認可になりました。この認可を根拠にシステム上にフラッグを立てます。「市場実勢相場適用先」と呼ぶことが多かったです。このフラッグの取引先は金額や時間を問わずその場の実勢相場で、取引が成立していました。ただそれでも不満が出ることがあり、通常もう一工夫していたのも事実です。
すなわち複数持込があった場合は、合計金額で相場を押さえてしまい、それからおもむろに個々のオペレーションに入っていったのです。これも後々のクレームえの回避を考えての事でした。
このように「市場実勢相場適用先」になれば、マーケットレートでの取引は可能になります。但し一つだけ留意点が有りました。それは公表相場との選択適用は認められないと言う点です。これは自由に適用相場の選ばせないと言うことであり、相場操縦取引の禁止にもつながるものです。
以上「マーケットレートで外為取引をしたい!」でした。
2022/02/13