研修講師のとき、新入相手に良くこの話をしてました。枕に「事務の」とありますが、別に事務に限りません。営業の場面でも大いに役立ちます。研修生には「憶えておいて損の無い話だよ。」こう言って話してました。今回はこの「正・速・美」についてのお話しです。
1.「正」とは、とにかく「正確」であること
ここでも何度となく触れていますが、銀行はお金を扱う商売です。銀行が間違っていては、文字通り商売になりません。しかも一度間違うとそれを正常にするには、当初の三倍の時間がかかってしまいます。つまり間違った処理や対応を「1」とすると、それを訂正するのに「1」、正しい処理や対応に又「1」かかります。つまり「1+1+1=3」となるわけです。
実際にミスが発生すると当人は狼狽してしまい、なかなか正しい手順戻れません。思った以上に時間がかかるのです。その意味でも「1+1+1=3」上手い表現と言えます。
2.「速」とは手際のよいこと。単にスピードの問題では無い
二番目は「速」です。これも言うは易く行うは難しです。日々の業務から一例を挙げたいと思います。営業店では日常業務(多くは午後3時まで)終了後に、店全体の勘定を合わせます。現金勘定と振替勘定の両方がゴメイ(勘定一致)となれば、基本的には終業体制となります。つまり帰れるようになるのです。
しかし「速」が失われると、この勘定合わせに異常に時間がかかります。各課、各係の締め上げ(当日勘定照合のこと)が中々揃いません。正しいのですが歩みがのろいので、何時までも店全体が合いません。このように単に「正」だけでは目的が達せられないことが多々あります。「速」あっての「正」と言えます。
3.最後は「美」です
これは前の二つに比べて理解が得にくいものです。「美」といっても勿論美的センス云々ではありません。言い換えると、「乱れなく整っている」と言えば良いでしょうか。なんでこんなことが重要かと言いますと、例えばお客様のご依頼を処理した場合を考えます。正しく早く出来上がっても、見るからに乱れて整って無ければ、お客様は何と思われるでしょうか。頼むからもう少し丁寧にやってよ。こう思われると思います。
これでは「正」「速」が出来ていても、評価はガタ落ちです。或いはこれは良くあったのですが、本部の臨店検査や金融庁検査などで、過去の取引記録を提出することがあります。これらの資料が「美」の条件を満たしていると、言い換えれば「乱れなく整っている」の状態であれば、検査官の心証は良好ですし検査結果も上向きになります。しかしその真逆の資料を出したらどうでしょうか。検査官の心証も真っ逆さまです。これではいけません。
こうならないためにも「美」の意識は持つべきだし、それを心掛けるべきなのです。如何でしたでしょうか。「正・速・美」。よかったら一度考えてみませんか。
2021/11/07