みずほ銀行及びその持株会社のみずほファイナンシャルグループに対して、監督官庁である金融庁から「業務改善命令」が発出されました。銀行業界の末席に連なりその禄を食んだ者として、この業務改善命令について大いに感じる所があります。|みずほ銀行への「業務改善命令」を憂う

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公開日:2021.09.29  / 最終更新日:2022.10.20

みずほ銀行への「業務改善命令」を憂う

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つい先日、みずほ銀行及びその持株会社のみずほファイナンシャルグループに対して、監督官庁である金融庁から「業務改善命令」が発出されました。銀行業界の末席に連なりその禄を食んだ者として、この業務改善命令について大いに感じる所があります。その感じるところとは一言で言えば大いなる憂いです。今回はこの点についてお話ししたいと思います。

今回の業務改善命令は言うまでも無く、今年に入ってから大小取り混ぜて7回に及ぶ、同行のシステム障害に起因するトラブルへのものです。古くは大蔵省の時代から、銀行に対する監督官庁からの指示指導は絶対でした。今回の命令もみずほ銀行に取っては絶対のものと言えます。しかも金融庁のHPに掲載された命令の中を見ると、かなりの特異性が見られます。これが私の憂鬱の原因なのです。

以下が私の気づいた点です。

その一. 業務改善命令を出すタイミングが早すぎる

通常の業務改善命令では、発出前に金融庁の検査が行われます。そしてその結果を基に改善命令が出されます。もちろん今回も金融庁の検査は行われています。但し検査は未だ終わってません。それは金融庁自身が認めています。しかし改善命令が出されました。これは異例と言わざるを得ません。それだけ金融庁が本件を重く見ていることと言えます。

その二. システムの安定性・継続性を優先して求めていること

次に気になったのは金融庁がみずほ側の一連の対応について、強い危機感を持っていることです。改善命令の中に、業務継続上必要なシステム更改及び更新であっても、新たなシステム障害が発生しないように管理体制を整えること。このように表現された部分があります。

この表現はかなりきついです。対メガバンクとしては異例と思います。かつての「護送船団方式」の行政指導で、船足の最も遅い銀行に対してのそんな言い方をしていました。何やらそれを彷彿させる物言いです。極めて不名誉な言われ方です。

この点に関して麻生大臣は「みずほ銀行を管理下に置くのか?」との質問に対して明確にそれを否定していました。しかしこの書きぶりは、銀行を管理下に置いた。こう考えてしまいます。銀行基幹システムの安定運用に対してそこ迄言うのか。そう感じます。

最後に最も気になった点です。それはみずほ銀行の役職員のモチベーションです。ここまで言われて、みんなの気持ちは現在どうなっているのでしょうか。背水の陣を敷いて全行一丸となっている!いま「みずほ」が熱い!こんな話は寡聞にして聞こえてきません。

システムの不具合はある程度どこの銀行にもあるもの。システム部門の人が足りないのでやむなし。こうなったら足らずを補いつつ日々の業務をやっていくしかない。こんな気持ちではないでしょうか。もしそうだったら間違いなく同じような問題に出くわします。

ここは是非全員が一丸となって、一日も早いシステム安定化を、目指して欲しいと思います。それこそが最短ルートの解決策だと思います。

参考HP:金融庁 みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20210922.html

2021/09/29

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