タイトルが少し判り難いので説明をします。「アザカレ」とは、米ドル・ユーロ以外の外国通貨を総称するものです。Other Currencyの略語と言えます。豪ドルや英ポンド等も含みます。今回は、この「アザカレ」調達に悩むお客様からのご相談を紹介します。
当時こちらのお客様は手工業品の輸入をされていました。目利きに優れた方だったのでサンプルを輸入されて、国内で試験的に販売した後は、継続的に輸入をして外国送金で順次決済をされていました。販売実績に見合った海外発注を心掛けておられたので、在庫が膨らんで資金繰りがショートすることはありませんでした。銀行としては安心してお付き合いが出来る方と言えます。
このお客様の悩みの一つが送金する通貨でした。殆どの場合、米ドルで二つ返事のOKが来るのですが、結構な割合で現地通貨を要求されるそうです。そんな時は、国内円預金で現地通貨を調達し送金されていました。この時の使われる換算レートがいつも変動していて、その変動幅が米ドル・ユーロより大きい気がする。何でこんなことになるのか。これがご相談の内容でした。
私がなぜそんなことを思われるのかとお尋ねしたところ、同じ品物を複数回注文して、代金をそれぞれ送金しようとすると、米ドルやユーロに比べて送金換算レートが大きく違うことがある。理由は有るのだろうけれど、これでは実務上大変困ってしまう。何とか安定的に送金できないだろうか。こんなお返事でした。
実はこのお話し中々に鋭いのです。日本では銀行が外貨建ての取引を行う場合は、ほぼ全て米ドルを基準にして行っています。つまり「アザカレ」であっても、直接日本円と「アザカレ」を交換するのでは無く、一度米ドルと交換した上で「アザカレ」と交換しているのです。(ちなみに米ドルと「アザカレ」の交換レートをクロスレートと呼びます)
つまり二重交換とも言える状況なのです。その「アザカレ」と米ドルは固定比率でもない限り、為替変動はそれぞれの通貨で発生します。ダブルで通貨変動リスクが発生するのです。お客様が適用相場の変動が大きいと感じられるのは、こんな仕組みが背景にあるからなのです。
ではこの変動をどう防ぐか。お客様の関心は正にここあったのです。ここでの最適解は、銀行としては儲けの減る話ではあるのですが、交換相場の適用回数を減らすしか有りません。具体的には、日本円から交換し始めるのでは無く、米ドルから交換を始めるのです。
これはお客様に米ドルの外貨預金を開いて頂いて、ここに米ドルをプールしておき、必要に応じて米ドルを出金して、「アザカレ」を買って頂くというやり方です。元々米ドル建ての送金が多くあるお客様でして、銀行チャージ削減の観点と、為替リスク回避の観点から、米ドルの外貨預金を活用されていました。
ですから私の提案はお客様の理解を簡単に得られ、早速外貨預金から送金され始めました。実はこの方法はドルクロスの活用と言うことなのですが、銀行にとってクロス取引の手数料は1%です。(ここはあくまでも私が勤務していた銀行の話です)このお客様の優遇は80%(つまり手数料を20%頂いてた)でしたので、1%%ですと銀行としては大減収となりました。
おそらくお客様も利益実感が相当あったと見えて、それから後は(出がらしちっく)「お茶」から(喫茶店)「珈琲」に、もてなしの内容が格上げになりました。これだけだと「何やってるんだ!」みたいな話ですが、こちらのお客様には後日談があります。
為替リスクヘッジのご相談から大きな為替予約に結びつき、銀行も大変儲けさせて頂きました。結局、「損して得取れ」の要領でしょうか。そのお話しは別の機会に譲りたいと思います。
2021/09/20