今回のお題は「英文字」聞きまちがえの防ぎ方です。「英語」の聞き間違えの防ぎ方。ではありません。ややこしいですが。これどういうことかと言えば、文字の羅列(意味の有無は不問)を音声で相手に伝えたい時に、確実に伝えるにはどうやれば良いかについてです。
一番良いのは文字そのものを相手に見せることですが、それが出来ない場合も多々あります。一例を挙げて見ます。「PMS」(ぴー・えむ・えす)と言う3文字を、口頭で相手に伝えようとします。この時、話者がどんなに大きな声や、一文字ずつ区切って発音しても、「P」が「T」に聞こえたり、「M」が「N」、「S」が「F」に聞こえる場合があります。これは話者の滑舌や、その場の騒音状況、聞き手の思い込みなどが誤伝の原因と考えられます。
しかし原因が何であれ、間違って伝わってしまうのでは困ります。L/C(信用状)やB/L(船荷証券)番号が間違って伝わることを、想像して頂ければ、正しく伝える重要性がおわかり頂けると思います。そこで外為現場では正しく伝えるために、言い換えを用いてました。この言い換えのことを「フォネティックコード」と言います。日本語では「通話表」と呼んでいるようです。(今回初めて知りました)
この「フォネティックコード」を使うと、相手にかなり正確に伝わります。前述の「PMS」の場合は、「ペキンのP、メキシコのM、スペインのS」と、主に国名・都市名を用いて表現していました。実際に使っていた感想では日本国内は勿論ですが、海外とのやり取りでも、今からスペルアウトすると言った上で、フォネティックコードを使えば、回線状況が悪くても何とかなっていました。
面白いのはそこで出てくる国名や都市名です。欧米系の銀行が相手ですと圧倒的に欧米の地名・都市名が良く、アジア系の銀行では、日本の地名でも非常に良く通じました。そしてどちらの場合でも「Y」は「ヨコハマ」の一択でした。こんなことからも港ヨコハマの知名度は高いんだ。こう思いました。
ちなみに今改めて各種のフォネティックコードを見てみると、英文字の表現は様々で有り、自分たちが使っていたのは、限りなく我流仕様だったんだなーと、やや赤面するものがあります。ちなみに当時は得意げに使っていました。
ここまでお話ししていると、和文の場合が気になってきました。じつは和文を言い換える場合には、総務省令に定めがあります。(総務省令無線局運用規則別表第5表)中を見てみると大変懐かしい気持ちに襲われました。遙か昔学生の頃、郵便局でアルバイトをしていました。担当は郵便窓口で書留や速達・小包等の受付・発送をしていました。
この郵便窓口では電報も受け付けたのです。受け付けるために、お客様に電文内容を頼信紙に書いて貰いました。そしてその頼信紙を手に、電報センターに発電依頼をかけます。そのときまさしくこの通話表通りに言い換えていたのです。「金頼む」だと「為替のカ、鼠のネ、煙草のタ、野原のノ、無線のム」と、言い換えながらセンターに電文を依頼していました。
今回、このコラムを書いていてこの二つが結びつきました。何とも言えない妙な気分です。こんなこともあるのですね。ではまた。
参考サイト: 通話表(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%A9%B1%E8%A1%A8
2021/06/09