今回は「銀証連携」と呼ばれるものについて考えます。この「銀証連携」ですが、「ぎんしょうれんけい」と読みます。意味するところは、文字通り銀行と証券会社(以下証券と略)が、連携して効果的な商売をしていこう。こんな意味合いです。
「顧客紹介」、「共同店舗の運営」、「金融商品の共同開発」などが、銀証連携の具体例に良く挙げられます。どの施策も銀行単体・証券単体でやるよりお互いに連携してやった方が、人・物・金すべての面で上手く行く。このような経験知を基にしています。一方、日本には「銀証の壁」(ファイヤーウオール)も存在しています。このファイヤーウオール規制と言う言葉を、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。
これは今から約30年前の1993年に設けられた規制で、銀行が証券子会社を持って証券業務を行う場合に、銀行の顧客情報を勝手に証券子会社に使わせてはならない。必ず顧客の同意を要する。こう言った規制です。確かに当時は銀行の優先的地位が現在よりも明確で、銀書連携には専業の証券会社から大きな反発が出たのも事実です。しかし今やこの壁の存在は、時代遅れとなっています。(私の意見です)
そこで2020年の7月に閣議決定された政府の成長戦略フォローアップには、「国内顧客を含めたファイヤーウオール規制の必要についても、公正な競争環境に留意しつつ検討する。」と明言されました。つまり銀証連携の障害となるファイヤーウオール規制は、今後更なる緩和や撤廃が見えてきたと言うことです。
ところでこの銀証連携の利用者側にとってのメリットは何でしょうか。やはり大きな所では、従来からの商売では銀行は銀行の守備範囲、証券は証券の守備範囲でしか何も出来ませんでした。つまり企業の資金調達や資金運用、個人の資産形成などで、利用者には限られた選択肢しかなかったのです。
しかし銀証連携が進むと複合的な提案が可能になります。銀行、証券、顧客すべてが最大メリットを追求できるようになるわけです。今までの銀行・証券別建てに比べて、大きく前進することが想像できます。
既にネット専業銀行では先行しています。楽天銀行と楽天証券、SBI証券と住信SBIネット銀行の組み合わせは、利用者から見て全く銀証の障壁を感じさせません。翻ってメガバンクでも三井住友銀行とSMBC日興証券、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガンスタンレー証券が、一歩先んじているような印象を受けます。
特に三井住友グループは都心の大型店では銀行店舗と証券店舗が同一フロアに入居しており、受付も実質一体となっています。利用者感覚では銀証同一店舗です。また双方に口座を開設していれば、資金移動は即時に行えるため、いちいち実店舗に行く必要もありません。
今後銀証連携が進めば、更に実店舗の必要性は低下するのでは?こんな感想をも持ってしまいます。今回は銀証連携についてお話ししました。
2021/06/02