昔に比べて郵送されるDM(ダイレクトメール)は激減しています。しかし未だに銀行からはDMが届くことがあります。しかもご丁寧に「親展」表示付きも珍しくありません。「親展」とは何事だと、慌てて開封される方も多いと思います。
しかしこの手のDMには、共通したある特徴があります。それは封筒にある印鑑の存在です。しかもご丁寧に二カ所も。場所は銀行支店名の後ろと、封筒の封緘部の場合が殆どです。これは何を意味するのでしょうか。気になると妙に気になります。
現金封筒なら割印(署名でも可)が必要なのは分るのですが、普通郵便ならば印鑑不要です。二カ所も押す必要なんかありません。しかも押されている封筒を開けてみても、担当者交代の挨拶とか、資産運用セミナーのお誘いとかです。これで「親展」扱い。ン!?本当にそう思います。さらに不可解なのは二カ所の印鑑。
気にしなければそれまでですが、なぜなんだろうと気になります。実はこの印鑑、受取人の為に押されているのではありません。銀行が自分たちの身を守るために押しているのです。なぜでしょうか。大いに気になりませんか?この疑問解く鍵は発信元にあります。
この手の封書に共通する特徴は、発信元が営業店なのです。つまり本部からやセンターからのように大量発送する場所からではなく、一通毎に手作業で出された封筒達なのです。本部やセンターで有れば、圧着ハガキや窓付き封筒での対応でしょうが、営業店であればこの部分は手作業にならざるを得ません。
手作業になった場合に、銀行が最も嫌がるのは個人情報の漏えいです。要は封筒の宛名と中身が違っていた場合です。こんな封書を受取人が開けてしまえば、それで一件事務事故発生です。銀行の一方的ミスで、個人情報が第三者に漏れるわけです。言い訳なんか出来ません。これは最も避けるべき事態なのです。それへの防止策が二カ所の印鑑なのです。
具体的には、まず封筒と中身をセットした人間が印鑑を押します。次に精査を頼まれた別人が、中身と封筒の宛名の一致を確認して、中身を封入してのり付けします。この時自分の印鑑を押すのです。これで誰と誰が当事者なのか明確になるわけです。何ともモヤモヤしたシステムですが、相互牽制を効かすことにより、事務事故を未然に防止するためで仕方有りません。
外為の場合更に厄介で英文表示が表に出てくるので、英語と日本語の一致を確認する作業が加わります。他課の人に精査を頼むと間違えやすいので、今一つ評判が良くありませんでした。そんな封書ですが現在でも一定数が届くので、「銀行の現場では相変わらずなんだなー」とつぶやくこの頃です。
2021/04/24