突然ですが、もしも銀行の窓口で、窓口担当者から、「貴方がお勤めの会社。お名前は何ですか。」こう聞かれたらどう答えますか。
答える前に質問内容の唐突さに、あっけにとられるのではありませんか。
実は外為担当者は、こんな質問をお客様にすることがあります。もちろん冗談や暇つぶしではなく、大まじめの話なのです。
と言ってもこのお話しは、このままでは正確性に欠けています。
銀行担当者は、質問の前ふりに英文字ではと付けているつもりなのです。銀行によっては、ここを英文社名と呼ぶところもあります。
でもなぜこんな質問をするのかと言えば、海外では漢字やかなは使えません。基本はアルファベットです。となると会社名も必然的にローマ字表示する必要があります。そこで先述のような質問が飛び出してくるわけです。こんな質問を受けた社長さんの中には、エイヤとばかりに日本語社名を、そのままローマ字表現する。こんな思い切った方もおられました。
それでも、普通はそれらしい英文社名を出していただけます。たとえば「らくらく貿易株式会社」であれば、「Raku Raku Trading Co.,Ltd.」こんな感じです。
日本の会社は多くの場合、地名や人名を冠している場合が多いので、英文社名も多くの場合は似たようなものになります。 一つの営業店では外為先はせいぜい100社ぐらいですので、重複は余り考えなくても良いのですが、外為センターになるとその数が数千の単位になりますので、同じ社名、似た社名がどうしても出てきます。
勿論、対策は取っていました。「同名社名リスト」、「類似社名リスト」と呼んでいましたが、間違えそうな社名のリストを用意するのです。加えてオンライン上にも注意喚起の旗を立てる。これもやってました。しかしこれでも社名を間違えてしまう事はありました。つまり口座相違のリスクはゼロにならなかったのです。
会社の定款で英文社名を定めている会社は、途中で変化するとことは先ず無いのですが、そうでない会社はいつのまにか英文社名が変わっていた。こんな嘘のような本当な話もありました。
そんな中でも一番困ったのが、和文社名も同じなら、英文社名も同じというパターンです。銀行の内部処理としては、お客様毎に識別番号をつけるので、お客様からの依頼であれば、混同する恐れは先ずありません。しかし海外からの送金や書類であれば、こちらの識別番号を、先方銀行が知るわけもありません。
どうしても判別が付かないときは、これはと目星を付けた会社に、送金や書類到着の予定の有無を聞いていました。これが大変に気を遣う仕事でして、余り細かく内容を話すと、もし違っていたときに情報漏えいと言われかねません。しかしクイズではあるまいし、ヒントを一つ一つなんてことも出来ません。
結局お客様とは阿吽の呼吸でやっていた。というのが本当のところです。
今回は英文社名にまつわるお話しでした。
参考サイト:法務省ホームページ「商号にローマ字等を用いることについて」
http:///www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html
2020/02/27