世の中には、何でこんな事に税金が掛るんだろう?
そんな例があります。今回お話しする印紙税もその一つです。印紙は契約にあたり取り交わす書面上に、貼る切手みたいなものです。
契約自由の原則があるので、印紙税のことなど気にせずに、自由にやれば良い。これ本音ですが実は外為関連で、過去ウーンと唸るような事例が発生しました。
我々はそのことを本部からの連絡で知ったのですが、当事者だった銀行は本当に大変だったと思います。
今回はそのお話しをしたいと思います。今回の件で焦点となったのは、お客様作成の荷為替手形です。この手形は輸出書類と共に、銀行に持ち込まれるのが通例です。この手形、振出人は輸出者です。一方印紙税の納税義務者は、手形作成者(金額等を記入した人)です。為替手形は約束手形に比べてやや複雑で、納税義務者が振出人或いは引受人の場合があります。
しかし此処では実務的に考えると、輸出者が印紙を貼る事になります。銀行によっては自分の所で貼って、お客様に請求する事もあるようです。しかし本件はあくまでも、お客様が貼ってこられた手形のお話しです。
この外為に用いる荷為替手形で必要な印紙は200円です。これは印紙税法でそういう取り決めがなされているからです。ただ200円となるには、いくつかの条件を満たす必要があります。ここを単純に「外為=200円」と考えたために、問題となったようです。
さてその条件ですが、一つは外国通貨で金額を表示することです。簡単に言うとUSD100,000.00とかEUR123,000.50のようにするわけです。これには例外は無いので、何も考える必要はありません。
もう一つは非居住者円表示をした円建て手形です。これは円建てであっても、国内円では無いことを明示すれば、外国通貨建てと同様な取り扱いをして良い。こう当局が決めて輸出振興に役立てようというわけです。この非居住者円表示は、手形表面に印刷やスタンプ等で表示します。
これが無いと円建て手形は原則に立ち返って、階級定額税率が適用され、例えば1億円であれば、2万円の収入印紙が必要となります。200円と2万円の差は大きいです。(他にも10万円未満は非課税。円建銀行引受手形は200円などの規定があります。詳しくは印紙税額表の3号文書の欄をご覧下さい。)
参考サイト:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
さて問題は、この非居住者円表示がない手形があったのです。ことはある大商社の税務調査に端を発します。この税務調査で印紙税の調査も行われました。いろいろな契約書と共に貿易関連書類も調査を受けました。すると貿易関連の印紙納付が全て、一律200円で処理されている。
これに担当官が気付いたのです。そこで担当官が一律処理の根拠を尋ねたところ、銀行からそうするように指導を受けたと回答したようです。不審に思った担当官が裏付け調査として、その銀行に非居住者円表示について確認を求めました。問い合わせを受けた銀行が外為センターに確認したところ、非居住者円スタンプ押捺不徹底が発見され、大騒ぎとなったようです。
この件その後どうなったのか。過怠税を取られたのかなど。詳細な顛末は不明ですが、余りにも稚拙な銀行対応に不信感を持ったこの商社が、この銀行との取引関係を見直した。こんな話を後で聞きました。
たかが収入印紙されど収入印紙のお話しでした。
2020/02/13