前編からの続きです。
では信用状で確認すべき点です。
(1) 各種期限
信用状に定められた船積期限・買取期限及び有効期限は、できる限り守る必要があります。間に合わないようであれば、輸入者側に変更要求します。
しかし今回のような場合は、輸入者側に変更要求しても、先ず100%こちらの要求は通りません。
それなので入手した信用状の各種期限は絶対厳守です。
まず日付を確認して下さい。期限に間に合わなければ、その時点でこの話は雲散霧消します。なお信用状そのものの有効期限については注意点があります。それは船積書類を提示する場所です。(通常は輸出国です)
信用状によっては、ここが輸入国の場合があります。書類を海外に送るのは、それなりの時間が必要です。折角、他の期限をクリアーしても相手国に届いたとき、時間切れとなっていた。こうなる可能性もあります。これは大変まずいことです。支払提示場所は、日本だと思い込むと危険です。大変な目に遭います。この点も是非確認してください。
(2) 要求された書類はすべて揃うのか
必要とされる書類は、信用状にこれまた明記されています。これをよく見て、全て揃えなければなりません。過去、日本にはその種の公的機関がないにもかかわらず、公的機関の証明書を要求していた信用状がありました。こんな場合でも信用状が許さなければ、他の書類では代用できません。
普通は直ちに信用状条件を変更して貰うか、条件不一致付きでの買取を、発行銀行に了解してもらうかの話です。しかし今回は、発行銀行にそんな対応は全く期待できません。全部自分で揃える必要があります。
(3) 輸入者の協力が必要な条項はないか
やはり過去の例ですが、信用状条件にインボイスのどれか一通に、出荷時点で輸入者代理人の出荷確認のサインを求めたものがありました。こんな条項があったら、他が全てOKでも先へ進まなくなります。輸出者だけで書類を完備させられることが、何よりの前提となります。
(4) 第三者発行の書類は要求されていないか
工作機械の輸出の場合。よく輸出品適合証明書の発行を求められます。どこでも良いのであれば、SGSのような世界的検査機関に頼みますが、全く知らない検査機関が、信用状に書かれている場合があります。それでも買い取って貰うためには、そこの証明書が必要です。
私の経験では、とある、検査機関が指定されていた信用状がありました。輸出者が検査を依頼した所、実権者が海外出張中でニ週間待ってくれ。こう言われたそうです。(発行のサインが貰らえないらしい。)泣く泣く二週間待って、証明書は受け取ったのですが、その間に肝心の信用状有効期限が切れてしまい、みすみす期限後提示という、信用状条件との不一致の状態で、書類を海外に発送せざるを得なくなりました。この時は幸い遅れて決済されましたので、若干のペナルティー支払だけで済みましたが、本件ではそれでは終わらなくなる可能性が高いです。
その3 船会社との交渉
此処の部分は銀行がサポートし難い部分です。信用状条件で船賃を輸出者が負担する場合は、普通に段取りすれば良いのですが、輸入者負担の場合厄介です。相手が倒産してますから、船賃の負担をしてくれるとは到底思えません。かといって船賃を輸出者負担に変えてしまいますと、信用状条件に合わないB/Lが出来上がってきてしまいます。
これでは信用状発行銀行に決済を要求できません。そこで一工夫して船賃相当金額を法務局に供託するか、船会社自身に預け金として渡すか。何らかの方法で、船賃未払い状態でもB/Lを発行して貰う必要があります。
この点は私に全く知見がありません。申し訳ないのですが、専門家の指導を仰いでください。
以後は後編になります。
2019/07/25