海外から輸入をするとき、輸出方から信用状(以下L/C)の開設を求められることがあります。
よく分からずに簡単に考えて銀行に依頼しても、L/C開設は銀行には与信行為であり、すぐに対応してはくれません。
これを如何に上手く開設して貰うか、これが今回のテーマです。
銀行担当者がL/C発行を依頼されてまず考えるのは、依頼してきたお客様に担保があるかです。
「担保なし」或いは「担保不足」と判断すれば、どんなに美味しい話であっても、前向きに検討はしてくれません。これは銀行員の習い性のような物で、ここをクリアーしなければ先へ進みません。今回のお話しに即して言えば、L/C開設に対する担保をどうするかです。
一番簡単なのは預金を担保にする方法です。これに不動産担保や有価証券を担保にする方法が続きます。しかしこれらは何れもL/C取引特有の物ではありません。
それに対して今からお話しする方法は、L/C開設特有のものです。ただ銀行が吞みやすい条件は、皆さんにとって不利の場合が多いです。そこで単一の方法だけを話すのではなく、二の矢・三の矢と選択肢を示すようにしてください。
銀行担当者が外為実務に通じていれば、一気に皆さんに対する認識が変わってくると思います。いずれにしてもポイントとなるのは、船荷証券(以下B/L)の扱いです。(今回は、航空貨物は対象外とします)
まずはB/L一部直送を持ちかけてみてください。これがすんなり通れば、銀行の貴社への信用は十分です。以後のコメントは読む必要はありません。
さてこの段階ではあえなく撃沈されたのであれば、輸入貨物貸渡(以下L/G)OKを交渉してください。若干費用は掛りますが、これが通れば貨物が日本に到着した時点で、皆さんは貨物引き取りが可能となります。これが二の矢です。
これでも駄目な場合はやむを得ません。
B/L全通銀行経由、かつL/G取組不可の条件を出してください。この条件は銀行に取っては輸入貨物そのものが担保となるため、同じL/C与信でも保全が効いていると判断します。つまり担保付き与信として、審査が通りやすくなるのです。
どんな銀行でも無担保の与信は、よほど企業規模が大きいか、その銀行との取引が超の付く優良先か、L/C金額が僅少かでなければ、いい顔はしてくれません。つまり上手くいかないのです。
しかしB/Lが全通銀行に提示され、L/Gも発生しない案件は、与信に担保が付いてる事になるので、上手くいく場合が多いです。つまりこれが三の矢となります。
L/C取引そのものは信用状統一規則の定めが、輸出者有利の面があるので、輸入者の人気は今一ですが、欲しい貨物が確実に手に入ることが期待できる上に、銀行が輸出者への代金支払を保証してくれるため、輸出側が大きなメリットを感じてくれます。つまり取引全体が上手く行き易いのです。
このメリットは大きいと考えます。是非皆さんも検討してみてください。
なお最後に一言。サレンダーB/Lという仕組みがあります。サレンダーB/L・OK.のL/Cも昨今では目にしますが、サレンダーB/Lは有価証券ではありません。銀行は担保とは見なさないので、たとえ全通銀行経由としても、無担保与信とみられる可能性が大きいです。この点は留意してください。
2019/03/18