銀行で外為を長年やっていると、お客様にも様々な人がいるなあ。
本当にそう感じます。その筆頭が在日華僑の人達です。
印僑(インド人)の人達の方が、インパクトありという人もいますが、私は中国や台湾からの人々のほうが、強く印象に残っています。
よく言われるように華僑の人々は、大変に地縁や血縁を大事にします。
私は神戸と横浜で華僑商社を担当していましたが、この地縁、血縁については、いずれの場所でも強く感じました。この感覚、上手くいえないのですが、対応を間違うと取引に応じてもらえません。私の所属した銀行も勿論ですが、他の日本の銀行も多くの場合、この対応がお世辞にも上手とは言えなくて、華僑とは取引内容が限定されていました。
しかし、そんな状況でも一度信頼関係が出来上がると、銀行取引は全部お任せの状態になります。全て分かった上で銀行にも商売をさせてくれます。本当に大人の取引先だと、いつも感じていました。ただ大人の取引をして貰うにはいくつかポイントがあります。
その一番目は、法人と取引しても個人から担保を取れない。です。よく銀行は中小企業取引をするときにその会社だけでなく、社長個人(場合によっては家族)にも目を向けます。法人はボロボロでも個人は大金持ち。こんな例はざらだからです。法人単体ではとても取引出来なくても、社長や家族から担保を貰えば、安心して取引出来ます。
ところが華僑の場合、個人資産がさっぱり分かりません。家族構成程度は社長との雑談で分かるのですが、社長個人はもちろん、家族の資産など全く手がかりも貰えません。
よく本部に外為稟議を挙げると承認条件に、
「個人資産調査の上、報告のこと。」
と指示がありました。
が、華僑に限ってはこの点は、ほぼ全滅でした。調査しても詳細は不明。社長の自宅の不動産評価のみ報告。これぐらいで、本部に納得してもらっていました。本部も心得たもので、取引を止めろとは言ってきませんでした。ある程度、華僑の特殊性は理解していたようです。
二番目は、担当者として気に入って貰う必要がある。です。大企業なら、相手が気に入らなくても仕事と割り切りますが、華僑の場合は、嫌われると全く取引してもらえません。逆に一旦好かれると、それこそ丸ごと為替を、持ち込んでもらえるようになります。
この辺の勘所が難しく、担当者交替で持ち込みが、急減したり急増したりして大いに閉口したことがあります。最初は面食らったのですが、事情が分かってからは、そのようなときはすぐに自分が出張ったり、上席の出馬を仰いだり、銀行全体として今まで通りのお付き合いを強く望んでいる。このスタイルを貫きました。
今から思っても華僑取引は大変でしたが、勉強になることが多く、その後の営業活動にも、大いに参考にしたものです。
2018/12/25