過去このコラムで採りあげたインコタームズですが、ようやくインコタームズ2020について、情報を得ることが出来ました。
最近、「新インコタームズ」について貴重な情報をいただいたので、外為に関係しそうな点をお話したいと思います。
まず一番目は、商品代金に保険料を加えた条件の新設です。
「CNI」という呼称のようで、「Cost&Insurance」の略でしょうか。実はこの概念は昔から有りました。「C&I」と呼んでました。輸出入共に目にする機会が有ったのですが、インコタームズの解説書には記載が無く、調べても根拠が分からない不思議な存在でした。
しかし「FOB」、「C&F」、「CIF」とあるのに、何で「C&I」が無いのか。間尺に合わない話ではないか。そう思ったのですが、実際は「L/Cにそう書いてある。」これで通してました。
それにしても、なんでいまごろこの話が、ICCの俎上に登ったのか。(ICCは国際商業会議所のこと。インコタームズを決める機関です。)これは私の想像ですが、この条件の背景にはコンテナターミナル保管中の貨物に対する、リスクヘッジがあるのではないでしょうか。
古くは阪神淡路大震災から、今回の台風21号に至るまで、ターミナル保管中のコンテナは、津波や高潮の被害を受けやすく、万一の場合は保険求償せざるを得ません。海上保険を輸入者が付保する場合、輸出者が別途付保しない限り、ターミナルに留置中のコンテナは無保険状態です。
こんなリスクを避けるために、インコタームズでも認めよう。そう考えたのだと思います。これはよく分かる話です。
二番目はFOBやCFR、CIFを、コンテナ輸送にも使えるようにする。インコタームズ2010で大きく打ち出した方針の変更です。古くからの外為人間にとっては、先祖返りと感じてしまいます。なぜこの方向性が出てきたのか分かりませんが、
現行のインコタームズ2010では、FOB等は第二グループです。
これはコンテナ輸送の分野からの閉め出しを意味します。これを再度利用できるように、しようとするものです。実際、日本の銀行で目にする貿易条件は、FOB系列が未だに多数を占めており、インコタームズ2010の理念が、広く行き渡っているとはいえない状態です。
こんな現実を踏まえた上での見直しでしょうか。だとしたら外為畑の人間としては、ほっとする出来事となります。規則は実務上の要請によって制定運用されるべき。こう先輩に教わりました。今回の話はまさしくそれの実践といえます。
以上二点が外為関連の部分です。
それにしてもUCP700(現行の信用状統一規則の次世代バージョン)は、どうなっているのでしょうか?
こちらもとんと聞こえてきません。気になって仕方ないこの頃です。
2018/11/22