ホテルのフロントマネジャーさんから聞いた話です。ホテルにとって困るお客さんは様々だそうです。でもこれらを総称する言葉は「UG客」。UGとはundesirable guest。 つまり好ましからざる客。
平たく言えば、二度と来て欲しくない客。顔を見たくない客。確かに私も同じ客商売として、こんなタイプは絶対願い下げです。
こんなUG客が発生した場合。これをリスト化しているそうです。これはホテル版のブラックリスト。
これの銀行版はあるのか。これが今回のテーマです。
ホテルほどでは有りませんが、銀行もいろいろな人と接点があります。お金が絡むだけに、トラブルや問題を起こす人は常に満載です。ではこんな人達をリスト化しているかと言えば、答えは「NO!」です。
皆さんの中には、住宅ローンやカードローンの審査の時に、ブラックリストに入っていると審査に落ちる。だから銀行にはブラックリストがある。こんな話をする人がいます。しかしここで言うリストは、情報信用機関の延滞者登録です。これはあくまでも個々人の延滞状況が記されているに過ぎませせん。
その人がクレーマーだ!とか、トラブルメーカーだ! こんな情報を登録しているわけではありません。
しかし銀行がこの手の情報を一切記録しないかと言えば、それも違います。公正な取引推進と法令遵守、取引水準の維持、そして何よりも他のお客様の安全安心確保のため、1件ごとに丁寧に記録しています。
これは犯罪収益移転防止の観点から定められている、「疑わしい取引」という、当局からの要請に応える意味合いもあります。また銀行に取ってお客様からの依頼に応じるには、その取引結果を記録すれば問題ありませんが、お断りする場合はその内容を何らかの記録にとどめねばならない。こういった事情もあります。
実際、銀行によって表現はまちまちですが、顧客依頼を断った。すなわち謝絶した。この場合は内容を記した記録を、必ず残しておきます。これがリストといえますでしょうか。(ブラックリストではありませんが)
しかしこれは案件単位であって、その人個人のリストではありません。我々は警察のような権限が有るわけでもないので、記録を残し必要に応じて金融庁等へ報告。ここまでです。
もちろん銀行が違えば情報は遮断されます。他の銀行で誰がUG客なのかは分かりません。私が目にした数少ない例外は、過去バンカメ(Bank of America)が、偽札情報を連絡してくる時に、どんな人間が偽札を持ち込んだかを、教えてくれていました。
偽札使いはある銀行で両替に成功すると、他の金融機関にも同じタイプの偽札を持ち込む傾向があり、流通防止の観点からの通知のようでした。これなどはブラックリストそのものでしたが、その通知で人相や服装は概略判明するものの、個人を特定できるほどではありませんでした。
その通知は一応カウンターの裏の方に貼っていましたが、役に立った覚えはないのが実態でした。
ありそうで無い「ブラックリスト」。あればと思ったこともありましたが、それよりもそんな状況にお客様を追い込まないようにするのが肝心、こう自らを戒めていたのも事実です。
2018/11/17