貿易取引で銀行が登場するのは、主として資金決済の場面です。
輸出であれば資金の受け取り。輸入であれば資金の支払いの場面です。
輸出業者にとって資金を受け取らないことには、次の商売の仕入れすら出来ないので、当たり前ともいえますが。
この資金を早く受け取る事。これには意外な点がポイントになります。今回はそのお話です。
外為に関する書籍やネット記事を見てみると、よく「コルレス契約」とか「コルレス銀行」といった言葉を目にします。ここでは中身の説明は、やや話が外れるので割愛しますが、今の外為ではこれらを意識しなくとも、大きな障害は無くなっています。
しかしもうちょっと突っ込むと、皆さんにもメリットが出てきます。でここで、少し突っ込んでみようと言うわけです。実はコルレス銀行と言った場合には、2種類の銀行が存在します。
一つ目は単にコルレス契約で資金の授受方法を定めるだけで、具体的な資金のやり取りは第三の銀行を使う場合です。これらの銀行は「ノン・デポジタリー・コルレスバンク」とか、単に「ノンデポバンク」と呼んでます。皆さんにとっては、コルレスのない銀行と余り変わりません。
これに対して二つ目のカテゴリーの銀行は、たとえ一部でも資金のやり取りを、お互いが預金口座を持ち合うことにより行う場合です。これは「デポジタリー・コルレスバンク」とか、単に「デポバンク」と呼んでいます。
実はこのパターンの銀行が皆さんのお役に立つのです。では具体的にどうお役に立つのでしょうか。
輸出の場合では代金回収をより確実にするのに、一番手っ取り早いのは、決済資金を日本国内で確保することです。通貨は主として日本円ですが、海外の銀行が自分の取引銀行に預金口座を持っていてくれれば、その口座から出金してお終い。こういう上手い具合になります。
どの銀行が口座を持っているかは、銀行は対外的に公表してませんので、理由を話してどの銀行かを、教えて貰う必要があります。
メガバンクでコルレス銀行が複数ある国・地域なら、その中の一行ぐらいには円口座を預かっている銀行があります。その銀行を使って資金回収を図るわけです。この方法の良い点は、第三国(特にアメリカ)の影響を回避出来る点です。
外為をやっていると、どうしてもアメリカの影響は避けられません。お互いが了解してもアメリカの規制が入ると、取引が止まってしまいます。それを避けることが出来るのです。USDは大変取引しやすい通貨ですが、こういったデメリットもあると、気をつける必要があります。
過去、イランやキューバ、ミヤンマーといった国との取引では、相手銀行の預かり円口座で、随分取引が成立しました。しかも円取引であれば為替リスクも避けられます。
もし輸出取引で資金回収に難儀しているのであれば、自社の取引銀行が預かっている円口座の銀行を、輸入者に使ってみてくれないかと提案するのも一方と思います。
上手くすれば為替リスクもヘッジできるので、一石二鳥ともいえます。
2018/09/08