皆さんは「レート・サービス」と言う言葉をご存じですか。
「相場優遇」とも呼ばれる、銀行の顧客サービスのことです。
これは銀行の対顧客相場(公表相場、公示相場のこと)より、皆さんにとって有利な相場が適用される制度です。
ホームページP等には出てませんが、どの銀行でもやっています。
たとえば銀行は一般的にUSD1.00について、1円の利幅を取っていますが、この顧客サービスが適用になると、1円の範囲内で銀行は自らのもうけを、顧客に戻します。その結果、皆さんが得をする。こういう仕組みです。
ちなみにこの利幅を、「為替売買益」とか「為替手数料」と呼んでいます。輸出取引であれば優遇分だけ手取りは増えますし、輸入取引であれば優遇分だけ支払額が減ります。80%優遇であれば1円の利幅から80銭を還元します。USD100千の取引で8万円戻りますので、皆さんには8万円の利益増加と同じことになります。粗利ではなくネット利益です。重なれば大きな数字になります。
こんな「レート・サービス」ですが、毎回銀行に頼む必要はありません。銀行と約束すればその後は自動適用です。お任せでOKです。皆さんは計算書などで、結果を確認すれば良いだけです。
しかしあるパターンの取引だけは注意が必要です。それをお話しします。
海外取引先と円ベース契約で支払いが外国通貨。こんな取引はありませんか。結構多いと思います。事前に契約で換算レートが決まっている。あるいは、送金時に自分で換算して外貨額を出す。これらであれば問題ありません。必要な日本円はキチンと優遇されます。
問題は銀行に外貨額を出して貰う場合です。具体的には「○○円相当の外貨を送金して欲しい」、このような依頼を銀行にした場合です。これは注意して下さい。計算書を見るとちゃんとレート・サービスされているのに、実は皆さんは優遇されてません。どういうことでしょうか。
このパターンでは、換算レートと送金のレートが一致してしまいます。しかし計算書に出てくるレートは、キチンと優遇されてます。この状態がまずいのです。
これは折角の優遇が、海外取引先に行ったことを意味します。なんとも口惜しい話ではありませんか。こうならないためには、工夫が必要です。
銀行依頼時は、優遇が自社に落ちるように以下の指示をして下さい。
1. 外貨換算は公表(公示)相場を用いる
2. 実際の換算レートは、優遇後相場を使う
これで銀行は分かります。後で計算書を見ても後悔することはありません。銀行によっては予めこのような依頼が出来るように、依頼書フォームを作り込んである場合もあります。
如何でしょうか。是非、この話をご活用下さい。万一、このパターンを銀行が理解できないようであれば、他所の銀行の利用を考えた方がいいかもしれません。
それほどこの話はマニアックではありますが、外為取扱銀行としては、対応しなければいけない話なのです。
2018/08/22