輸出代金回収のため、銀行に船積書類を提出し買取を依頼する。
典型的な輸出為替の取り扱い依頼場面です。
ところが書類上のミスが発見された。どうしましょうか、と銀行からの問い合わせが来た。
今回はこんな時はどうするの?これをお話します。
貿易担当者として対応を間違うと、とんでもないことになりそうです。
解決方法ですが教科書的に言えば、もちろん正しい書類に差し替える。これです。ところが往々にして、現実はそうなりません。時間が切迫して差替の暇が無いとか、会社印やサインが必要なのに、権限のある人が海外出張で貰えない。こんなまるで嵌められたような場面になることがあります。
私が経験した中にも社長が2週間フィリピンに出張していて、その間どうしようもない。こんな事例もありました。(この時はやむなく訂正せず送り、なんとか決済してもらいました。)
そこで登場するのが、訂正印です。
国内取引でもよく聞く話で、訂正印とか訂正小印と呼ばれています。外為取引でこれに当たるものが、チョップ印(又はチップ印)です。なたで切ったように形なのでチョップ印、木っ端みたいなのでチップ印。こう呼ばれていました。実物は縦横1〜1.5cmの角形、長さ5〜6cmの木製ゴム判で、印面は小さな丸形のゴム判でした。
この丸形の印面に予め会社名が彫り込んであり、訂正する箇所にその部分を黒いスタンプで押捺するというものです。文章にすると煩雑ですが、実際に使ってみると中々の優れもので、物の本などにはどこにも書いてませんが、実務上は重宝していました。
訂正箇所にチョップ印が押されていれば、海外の銀行から書類が、偽造・変造だとの指摘は受ける心配はありませんでした。つまり差替え書類ではなく、訂正書類を海外へ送っていたわけです。これならば社長が海外出張でも、安心して対応できます。
そんなわけでチョップ印を作っている会社は、相当数有りました。さらに時間節約の観点から、チョップ印を銀行に預ける方法もありました。銀行とはいえ第三者に預ける点は、議論の分かれるところで、銀行によっては全く預かりが駄目なところから、行内手続きに従って重要物に準じた扱いで預かるところまで、いろいろでした。預かり銀行が多かった印象です。
完璧な書類が一番ですが、次善の策としてのチョップ印利用。要はシッパーバイヤー間の了解と、納得しての決済に問題が無ければ、これもありかなと思います。
いま皆さんの所でチョップ印を使わずに、すべて差替えで対応しているのであれば、取引銀行に相談してチョップ印を作られたらどうでしょうか。
特に印鑑登録が必要な話でもありませんし、作る数にも制限無しです。少しでもお役に立てばと思い書いてみました。チョップ印のお話でした。
2018/07/04