このところ世情を賑わす「〇〇案件」とか「忖度」という言葉。
皆さんはどうお聞きになっておられますか。
私は過去似たような案件にぶつかりました。
結果は何も無かったのですが、当時は狐につままれたような、本当に奇妙な気持ちがしました。
今回はそのお話をしてみたいと思います。
私のいた銀行には、いわゆる家柄の良い人がいました。その極めつけは旧皇族の方です。既に皇族から離脱されていましたが、ご両親や祖父母には、皇室関係者がずらっと並ばれていました。この元宮様が銀行を定年となり、私のいた支店の取引先に出向されて、経理部長をやっておられました。
あるとき、この元宮様から支店長に、
「今度、外為を始めたいという知り合いが、そちらに行くのでよろしく。」
と、電話があったそうです。
支店長としては大事なOBからの依頼と言うことで、私に対応せよとの指示をし、自分も同席すると言い出しました。(今から思えば支店長なりの忖度?)何日か後、ご婦人が二人で来店されました。正直ビジネスシーンでは、お見受けしない雰囲気の方々でした。しかしVIP扱いで、丁寧に対応したことは言うまでもありません。
さて初対面の挨拶もそこそこに、支店長・副支店長・私の3人で、ご用件をお伺いしました。以下《・・・》内は、私の感想です。
「どういったご商売をされるのですか?」(支店長)
「シンガポールから蘭を輸入します。」(婦人A)
「シンガポールの農園は大変熱心なのです。」(婦人B)
《・・・物を売る方が熱心なのは当然では???》
「輸入した蘭はどこに納めるのですか?」(支店長)
「二人で個人のお宅に届けます。」(婦人A)
「大手にはない。きめ細かさを売りにします。」(婦人B)
《・・・そんな、コスト掛かりすぎでは???》
「輸入決済はどうされるのですか。」(これは私)
「注文主から先にお金を預かり、それを送金します。」(婦人A)
《・・・リスクは無いけど、そんな気前のいいお客さんいるのかな???》
「どちらで営業されるのですか?」(副支店長)
「私たちは、一人が千葉・もう一人が自由が丘なので、それぞれの自宅を事務所にします。」(婦人A)
《・・・ここは千葉でも自由が丘でも無いのに、送金にわざわざ来るの???》
こんな感じで、表面的には和やかなやり取りが続きました。
しかし、だんだん支店長の顔色が曇ってきました。どうもまともな話にはならないと判断したようです。
そして
「次の予定があるので、後はこの二人にお話し下さい。」
こう言って、そのまま応接室を出てしまいました。
残された我々は、お二人の「こうなれば良いな」とか、「こういう風にしてみたい」的なお話をたっぷり聞かされました。結局その日は、口座作成でお引き取り願ったのですが、正直まともな外為案件になるとも思えず、思案投げ首の体となりました。
ちなみにこの後どうなったかと言えば、何回か口座への入出金はあったものの、肝心の外国送金は一回も発生しませんでした。当初の元宮様からの紹介案件という意気込みはどこへやら、結局ご婦人2人のお話を伺ったという事だけが残るという、なんとも締まりの無い話になってしまいました。
〇〇案件だから忖度してというのは、今も昔も上手くいかないようです。
2018/05/31